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トラストルノ  作者: なさぎしょう
輪舞曲
89/296

SOUP本部 罠とリスト


「やっと抜け出せた‼︎」


ケイトとシンクはやっとの思いでワイヤーを抜け出し、コード室へ向かう。

この2つ下の階にあるコード室までの道中にはどうか少年や彼の仕掛けた罠に鉢合わせませんように…と願いつつ先を急ぐ。





コード室は生きるものの一切無い、無機質の塊のような部屋だった。

扉を開けてシンクが顔をしかめたのも無理はない。


「これじゃリストがどれには入ってんのかもさっぱりわかんねぇじゃねぇか…」


部屋の壁に沿って等間隔で並べられた物凄い数の機器。エアスクリーン式のから旧時代のパソコン、端末までが揃っている。

さらにそれらの並んだ机と机の間に、やはり等間隔に並んだ棚にはいまでは滅多にお目にかかれない紙媒体を挟む用のファイルや、メモリーカードやチップの類が置かれ並べられているのが見える。


「とりあえずめぼしいのを探す…しかないのかな。」


ある程度の資料数は覚悟していたがここまで大量にあると思わなかった。



「………?」


「シンク?どうしたの。」


シンクがまだ眉をひそめながら部屋に入らずに立ち止まっている。おかげで少し後ろにいるケイトも部屋に入れない。


「なぁ…ここの扉普通に開いたよな?」


「え?うん……‼︎」


シンクが言わんとすることが分かると、ケイトも咄嗟に銃を持ち警戒する。

そりゃそうだ。こんな部屋があっさり開けられる訳がない。パスコード、指紋、鍵…どんなものであれ施錠されていなければならない筈だ。


「ナインが開けてくれた…とか?」


「可能性はあるな。」


シンクの合図でケイトは扉の陰にかがみこみ、シンクの方に銃口を向ける。

シンクがそのまま一歩踏み込んだ。


『おっきゃくさまでーす‼︎』


「……っ⁉︎」


シンクが入るが早いか、部屋中のエアスクリーン、パソコン、端末の画面が一斉につき、同じ映像が流れる。

身体の半分が青で、残り半分が赤の不気味な笑顔のキャラクターだ。

そいつがペコペコと頭を下げてから、タップダンスのような奇妙な動きをして、それから腕で丸を作る。


「き…きもっ…」


ケイトが言うと、シンクがしばし考えてからケイトを振り返った。


「いまから俺がこの部屋に仕掛けられてるトラップを全て解除してくる。そしたら2人で手分けして"9"と書かれた資料を探すぞ‼︎」


「了解‼︎」


何がどうなってそういう作戦に結びついたのかはよく分からないが、シンクはこういう時の判断を間違うようなやつじゃない。ケイトはシンクが器用に全てのトラップを交わしつつ、解除するのを確認してから部屋内に入っていった。



"9"と書かれた資料はかなりあったが、シンクが紙媒体だと思う、と言うので書類を中心に見ていく。


「これはちげぇな…」


たまに中身を確認しつつ探すがそれらしきものが見当たらない。手袋越しだと探しづらいが取るわけにもいかずもどかしい。


その時ケイトはふと出入り口に目をやった。誰かの足音が聞こえた気がしたのだ。


「誰か来ちゃうかも」


「急ぐぞ‼︎」


ケイトはそれでも出入り口から視線が外せない。


9…九…ナイン…9…九…


頭の中で繰り返しながら見渡し、そして見つけた。


「これだ‼︎」


さっきから不自然を感じていた正体。

旧時代のパソコンには1つ1つ番号が振られ液晶にその番号が貼ってある。さらに画面にも同じ番号がでているのだが、番号は7までしかない。

しかしそのうちの1つが貼られているのは4なのに、画面の番号は5なのだ。5が2台続いているから違和感を感じたのだ。


「4+5は9ってか?」


「それか僕らの番号のつもりかも。」


その画面をクリックするとホーム画面が出てくる。"全てのファイル"から"9"とつくファイルを探すと、一件だけがヒットした。「資料⑨」と書かれたそれは開くことが出来ず、しかし印刷を押すと物凄い勢いで紙が印刷される。

そして印刷を終えると、ファイルは自動的に削除され、パソコンもまた、今度は"4"という数字を表示したまま止まる。


「ナインってやっぱりずば抜けてるよね…」


「あぁ、感謝だな。」


書類を取ると、専用の薄型バッグに入れ、シンクが衣服の中に隠し入れる。


「行くぞ‼︎」


「うん‼︎」





伏は襲われ肩と脚を負傷してしまったアレイを連れて、コード室へ向かった。アレイがこの建物のカメラ全てをハッキングしたところ、その部屋に入っていくのが見えたそうなのだ。


「なにしてたんだろ?」


「さぁね。案外首席が言ってたみたいに機密情報盗んだのかもよ。」


「マジで僕らも情報盗っちゃうの?」


困惑したように言いながら、伏は楽しそうだ。


「首席がお望みだからなぁー」


「アレイ君がいりゃすぐに情報なんて手に入るよね‼︎」


「どうかな?」



2人はすでに人のいなくなったコード室へ向かう。


コード室はいかにも(・・・・)色々な情報がありそうな感じの部屋だった。


「うぇぇ…すごいねぇ。」


伏は感嘆の声を漏らす。


「入り口が開いてるってことは、もう連中は来た後か…」


「ちぇっ。まぁ止むなし。にしてもどこを探せば機密情報なんて見つかるんだろう…いやむしろどこを漁ってもゴロゴロ出てきそうすぎて‼︎」


「たぶん端末かパソコンのどちらかがあったかくなってるやつがあれば、連中が取って行ったのはその中の何かだよ。」


「なるほど‼︎うしっ、待ってて‼︎」


怪我をしているアレイをその辺の椅子に座らせると、ゴム手袋をはめ、端から端末やパソコンを触っていく。


「うーん…あったかい気もする……うーん………‼︎あ、多分これ‼︎」


伏が旧時代のパソコンを指して言う。


「そしたらそれを開いて、すべてのフォルダーから番号を入れてみて1〜13まで。連中はトランプに文字った数字を多用してくるはずだ。」


「…あ、アレイ氏…これ大量に引っかかるよ?」


「だろうな、それが普通だ。だから逆に沢山引っかからない数字がないかやってみろよ。」


伏は四苦八苦しながらボードの上に並べられたブロックを押していく。

1〜3まではとにかく多くヒットした。だが4あたりから個数が減っていく。


「次は、8…あ、これも結構少ない。次は、9………‼︎」


1つしかヒットするものがない…?


「1個しか当てはまらないよ‼︎」


「なんてフォルダだ?」


「"資料⑨"だって‼︎」


「なら今度は"資料②"って試しに検索してみ?それで引っかかんなきゃ、急に9だけあるおかしなファイルってことになる。」


「ほぉ〜でもなんで①じゃないの?」


「①はつけない可能性があるからだよ。最初はどれだけの量になるかなんて分かんないからな。」


伏は終始、アレイのすごさに驚きながら言われた通りに進めていく。

しかしいざ"資料⑨"を開こうとすると、開けない。


「これ開けないよ?でも印刷は出来るみたい。」


「じゃあ試しに印刷してみれば?」


「承知。」


印刷というところを押してみると、そばにあった箱型の機械からガガッザーという音ともに幾枚もの紙が出てきた。内容も大変気になるところだが、この現場はトランプの連中と鉢合わせもまずい、と同時にSOUPの方々にも見つかるとまずいので急いでアレイの持つケースにしまい、また肩を貸すと、2人は部屋が元の通りになっていることを確認して、コード室を後にした。





トラストルノの中枢を牛耳る巨大組織の、機密情報の様々は、かくしていとも容易く2組の盗人に奪われた。


しかし驚くべきは実行犯の2組ではない。

この場にいない。

それでいて万全のセキュリティも、機密情報の見つけ出しも、そして受け渡しまでを完璧に遂行してみせたある1人(・・・・)による所業。

これぞ驚くべき。



後の1組が去った後、4番目のパソコンが勝手に起動し、そして綺麗に掃除(・・)をすませると、また静かに落ちていった。



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