SOUP本部 死神達と化物達2
首か胴か…
躊躇っている間にシンクが撃たれては元も子もないのだが、その少年があまりにも…自分の思い出の中の人に似ていて、斬る事ができなかった。
結局、クルリと刃を返して左手を腕から断ち斬る。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
少年は一瞬の困惑の後、叫びそして背を丸めうずまる。
シンクは顔をしかめ、本心ではないのだろうが、思い切り少年を蹴飛ばすと右手奥で何故か薄煙にまかれて、いるのであろうケイトの方へ駆けていく。
「助かった。」
すれ違いざまに呟かれたシンクの声は、スッと夜闇に消えてゆく。
さて、先程の…私に酷似した少女はそろそろやって来るだろうか。
彼女と、そして手を無くして尚、ある種の冷静さを取り戻し戦わんとする少年の対処は、私がすべきなのだろう。
ジェスターは、少女を迎え撃つべく少年の側に立ちぐるりと辺りを見回した。
薄煙の向こう側がぼんやり見え、そして驚愕した。
シンクが…よりによって頭も体力もあるシンクが、すでに片腕の使えない少年如きに組み敷かれるなんて…‼︎
しかもあろうことか銃口まで向けられている。
あの少年は…化物だ。
そうに違いない。
シンクを助ける手立ても浮かばず、ただただ「ジェスター来い‼︎」と他人任せに思いながら見ているしかない。
その時だった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
煙でよく見えないが、少年に何かあったらしい。
少年の傍背景の夜空に溶け込むように、待ち人が立っていた。容赦なく、しかし手首であったことは優しさだろうか、スパッと断ち斬ってしまった。
「う…うそ……」
ケイトを押さえつけている少年も、驚きに声を漏らす。
手先の無くなった少年を申し訳なさそうに蹴りおろすと、シンクがくるりと方向転換をしてこちらに向かってくる。助かった…‼︎と思っていると、少年がパッと手を離し、耳元を押さえた。何らかの指示か、あるいはまたも先程と同じ手か…
シンクもそれを警戒してか首を竦めるようにして、フードや衣服で少しでも音を遮断しようとする。
ケイトも耳を塞ごうとするが、直前に少年の声が聞こえた。
「了解‼︎僕が向かう。」
なんだよ‼︎今度はインカムからの指示か⁉︎
シンクの盛大な舌打ちも聞こえてくる。少年はそのまま出口に立ち去りがてら、ケイトとシンクを振り返り…頬を膨らませニマッとしながら口元を手で隠すようにした。完全に小馬鹿にしている。
「クソガキ‼︎」
ケイトとシンクは小柄な少年の態度にムカッとしつつも、立ち上がり後を追おうとする。
少年がどこに向かうのかはさておき、2人はコード室に向かうべく出入り口に近づく…
が、ここで小柄な少年が残していった仕掛け罠が多分に防壁として効力を発揮してきた。
「っんとにクソガキが‼︎」
少年と違いこちらは成人の背丈もある男2人…さて、どう通ってみせよう。