SOUP本部 死神達と化物達
ガシッ‼︎
「ひぇっ⁉︎」
「逃がすかぁぁぁぁ‼︎」
伏は煙幕、閃光に関しては対処に慣れていた。爆発されると厄介だが、煙幕だの閃光だのは小さい時から反代理戦争の人々から散々罵詈雑言と共に浴びせられてきたのだから。
白い男の腕を掴むとそのまま引き倒し、腕を後ろに捻り上げて組み伏せる。
男はとてもテロリストとは思えぬほどに細く、薄かった。普段から芦屋だのロブだのとも戦闘訓練をしている伏には、この程度のやわい優男を引き倒すくらいなんてことはない。
「痛っ‼︎」
強めに押さえつけると、反射的に逃れようとしてくる。
「ケイト‼︎」
晴れかかった煙の向こう側から、真城と戦っている男の声が聞こえた。直後に鈍い打撲音。
真城との戦闘において、余所見は禁物。
たとえどれだけこちらが優位であっても、真城自信が明確に負けを認めているか、でなければ本当に死んでしまってもない限りは絶対に油断してはならない。
どれだけの怪我も、真城にとってはうっすらとした感覚でしかない。
真城は極度の痛覚異常を持っている。
「…シンク?」
なんの音も聞こえなくなった薄煙の向こう側に向かって、組み伏せられた男が呟く。
油断した。
ケイトの「痛っ‼︎」という声が聞こえて、思わずそちらに意識をやってしまった。その一瞬を、少年は逃さなかった。
タックルをかまされ、少年の頭部が見事に胸を打ち息がつまる。そこから間髪入れずに鋭いストレートが鳩尾のあたりに叩き込まれる。
さらに態勢を確実に崩さんと脚を掴まれ、背中を強かに打ちつけてしまった。あまりのスピードでここまでを連打はれたために頭も庇いきれずに打ち付ける。
意識がぼやっとして、瞬間、少年の顔や周りの風景が見えなくなった。
少年は馬乗りになり、一瞬意識を失ったシンクの懐から小銃を拝借すると、至近距離から頭に狙いを定めて引き金に力を込めた。
真城は痛み無くして姿を消した左手と小銃を咄嗟に目で探した。すると自分の腕の真下にそれらしきものが目に入る。
痛みは無い…が視覚的な痛みが真城を襲う。
「…‼︎うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
手が…左手が………ない。
真城の斜め背後の辺りからスッと現れた黒い影は音も無く、空を切り、真城の左手を奪った。
血が…血が止まらない…
真城は意識が遠のくのを感じた。