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トラストルノ  作者: なさぎしょう
輪舞曲
82/296

SOUP本部 死神と化物2


なにがともあれ、顔が見えれば第一任務は完了だ。口元はわずかにしか見えないが、確かにその顔を覚えた。

端正な、精巧な、作り物じみた真っ白な顔に髪。

なるほどあの資料も全くの紙屑では無かったわけだ。




ケイトは考えを巡らせる。

このままワイヤーをうまいこと避けて出入り口から外に向かったとして、この少年は自分を追ってくるだろうか?

まかり間違ってこの場にとどまりシンク達の方に参戦されたら、シンクが大変だ。

出来ることなら2人の少年を同時に欺いてでも、シンクと一緒に目的地(コードしつ)へ行きたいのだが…






視界の端にケイトと小柄な少年が見えた。

大丈夫だろうか。正直、シンクと少年の戦いは"余裕があるのに隙がない"ような状態で拮抗していた。

なんとなくもどかしい。

ケイトを助けに行くことは出来ない、少年に決定打を加えることも出来ない、といって自分も追い詰められた状況にあるわけではない。しかし少年から目を離すのは駄目だ。

この少年からは殺気とも狂気とも取れる雰囲気が放たれている。見た目と反して、少年の中には押しとどめられない怪物がいるように思えた。





ケイトは小銃による的確な射撃で、なんとか場を凌ぎつつ、シンク達の方を伺っていた。シンク達は一進一退。

ケイトの方も決して圧倒的優位とは言い難い。

相手にしている小柄な少年はワイヤー以外にもとっておきの特技を持っていた。


彼はとにかくすばしっこい。そしてその早さを生かして、先程から何度も背後をとられては、危うく突き落とされそうになっている。

速さが尋常じゃないうえに、要は気配を消すのがうまいのだ。

ふわりと消え、次の瞬間には音も無く真横真後ろに現れる。もはやホラーだ。


「どこに気ぃやってんの、さ‼︎」


挙句見た目に反して口が悪いわ、気が強いわ…

気迫に圧倒されそうになってしまう。



と、こちらもあちらも少年達が一斉に動きを緩め耳元に手を当てる。

誰かからの指示だろうか?

これ以上仲間を増やされては困る。とケイトが少年に一発放とうとした瞬間だった。



キィーーーッキキッキーーーッ…


「うがぁっ…⁉︎」


「うわ‼︎なにこれ…⁉︎」


耳をつんざく、とはまさにこのこと。

金切り声の女が、わざわざ耳許で、しかも拡声器でもって叫び続けているような感覚。

手で耳を塞いでも鼓膜を打ち破らんとしてくる。


一方の少年達はというと涼しい顔で何事も無いようにしている。先程のは指示を仰いでいたのではなく…特殊な耳栓の類を付けていたのかもしれない。

なにがともあれ空間を引き裂くような音はしばらく泣いて、止んだ。

どうにかこうにか鼓膜は無事だが、目の前がクラクラしてくる。少年はここぞとばかりにケイトに襲いかかるが、ケイトはそれを寸前でかわし、やむなく奥の手の煙幕弾を転がすと、音も無く降り立ちシンクの方へ向かう……


はずだったのだが。


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