外側≪地図無き城≫
「おい‼︎また更新されてる‼︎」
「ね‼︎それに今回は豪華だよな〜。あの切り裂き魔に死神、あとは天使と悪魔までいる‼︎」
「あんたたち手を洗いなさい‼︎」
夕食の支度をする母親に言われ、まだ幼い弟を連れて兄弟は洗面所へ行く。その間も話は尽きず、話題は終始大人気ゲーム"SURVIV"について。
「相手は誰だっけ?」
「知らないやつ。なんか今回新ステージに新キャラまで登場なんだよ‼︎確か…"西の客人"ってグループと、"東の客人"ってグループだったような気がする。」
手を洗い席に着くと、早速特別配信のチャンネル38番に回す。38番が"SURVIV"のゲームそのものを流してくれる番組、58番がその日のステージ解説や登場戦士紹介などをしてくれる番組となっている。
今日はまだ、小規模ステージしかやっていない。でも今晩はお楽しみ、新ステージでの大規模試合があるのだ。
「ほら、始まる前に料理とか持っていって‼︎私だって観たいんだから。」
今日は父親の帰りが遅い。会社の仲間たちとの飲み会があるらしい。
きっとそこでもみんなでこのチャンネルを巨大エアスクリーンで観るんだろう。どちらを応援するのか、応援するグループや人物ごとに分かれて白熱した応援をするのだ。
「このゲームはリアルすぎる。きっと何か裏側があるに違いない…今日こそは突き止める…」
「はいはい、頑張ってください。」
絶対に今年はこれについて論文を出す。
今日は新しいことが目白押しだそうじゃないか。そういう時はボロが出やすい。
「別に見るのは構わないですけど、あんまりゲームにのめり込みすぎないでくださいよ。」
「あぁ…」
老若男女から不動の人気を誇るゲームであることはもはや特記すべきことでもない。擬似の限界に挑んだ、と言われるこのゲームのような"なにか"の裏側が知りたい。
そのためには、本当はこんな小綺麗で住みよい家の居間にいてはいけないような気もする。このゲームが作られている…と噂される"トラストルノ"に出向くのが良いのだろうが…
いや、止めておこう。これ以上妻に心配もかけるまえ。