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トラストルノ  作者: なさぎしょう
輪舞曲
68/296

SOUP本部 SideH 地図無き城3


「なぁ、カルマ君…これって…」


リドウィンが"Today Stage"と書かれたゲームの地図画面をカルマに見せる。カルマは鼻歌まじりにその画面を見てニコニコする。


切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー)ってつまり…そういうことなのかな?」


「このゲームはね。トラストルノの外の人間からすれば画面の中の非現実(バーチャル)なんだよ。でもねー、僕らにとってはこのゲームは現実(リアル)そのものなんだよねー。」


「ちなみに、僕らってもしかしてこの"西の客人"?」


「そうだね。」


西の客人、と吹き出しの出た4人は全員が学生服のようなものを着ていて、髪型などもご丁寧にリドウィン達に合わせてある。目の色などもリアルに再現されている。学生服は4人とも着ていないのだが、これは学生であるとわかりやすくするためだろうか。


キャラクターの再現度の高さにも驚くが、トラストルノと思しき建物の構造がかなりしっかり再現されていることのほうが驚く。

このゲームを作った人はSOUPの中に入ったことがあるのだろうか。


「ここのStageね、ついさっきアップされたばっかりなんだー。だからもうこのゲームの作り主はSOUP内にいるのかもね。」


「このゲームの仕組みとかってどうなってるんだろう。」


「あぁそれはね、多分だけど…



まず戦場になりそうな場所--今回だったらSOUP本部ーーに無数のカメラを設置する。で、そのままの映像だと外の人間に見せられない。だからわざとバーチャルっぽくする。

それを配信し、上手くやれれば後援会などを得て金も手に入れられる。

このゲームには固定の正義や悪は存在しない。好きなキャラクターを応援すればいい。

画面の向こうの人々からすればスポーツ観戦するかのように擬似戦闘(バーチャルサバイバル)を応援し、盛り上がるわけさ。

画面の向こう側では、本当に人が死んだりしてるなんて夢にも思わずにね。


ただ、このゲームのすごいところはそれだけじゃない。


中の人間をも欺いているんだよ。」


カルマは目をキラキラさせて前乗りで話す。

リドウィンはにわかには信じがたい話の連続でついていけない。


「トラストルノの内部について外の連中に教えようと思っても、それは基本的にカンパニーやSOUPに妨げられる。

だからゲームを隠れ蓑に配信してるのさ。

あとは皮肉かな?外の平和運動家たちへの。」


リドウィンは平和運動家たちへの皮肉、というところで顔をしかめる。


「トラストルノの外ではこの"サバイブ"ってゲームは大人気だ。しかももっと言ってしまえばゲームの中のキャラクターと外側のプレイヤーって構図は現実そのものだしね。」


「外側の人間のいざこざを代理戦争組織(カンパニー)の戦闘によって決着をつける…外側は眺めているだけ?」


「そう‼︎"Say anything , if from the outside .(外側からならなんだって言える)"って言葉が背景のテロップとかにちょくちょく出てくるんだよ。」


正直良い気はしない。

このゲームの作り主は何かの啓示のつもりで始めたのかもしれないし、実際どんな理由があったのかは知らないが、こんなのは胸糞が悪いだけだ。


「で、本題なんだけど。今の適当な説明でどこまで理解してもらえたかわかんないけど、とにかくこのゲームが情報(アイテム)収集には最適だということがわかっただろ?」


確かに、ここに仮に切り裂き魔(ジャック・ザ・リッパー)が出てきたとして、そいつが俺らの追っているジャックと同一人物であるなら、動きをある程度は把握出来るということになる。これはかなり大きな収穫だ。


「ちなみに、本人の持ち武器なんかも、表示されたりする。ジャックの愛用品はなんだと思う?」


「切り裂く…ってんだからナイフ?」


「いや、もっとズバッといける感じ。」


「…すごいファンタジックな事を言ってしまうけど、大鎌とか?」


「おぉ、ちと違う。もう少しグロテスクかなー。」


「は?グロテスクって……‼︎」


「わかった?」


カルマはニヤニヤして聞いてくる。

リドウィンの頭には本当に小さい頃、うっかり見てしまった旧時代の1本の映画が思い出されていた。若者達と、それを追う画面の狂気殺人鬼。


「まさか…ジャックの武器は…チェーンソー?」


「ピンポーン‼︎」


それでは切り裂き魔(ジャック・ザ・リッパー)というよりは、狂気殺人鬼(レザーフェイス)だ。

どちらにしても相対したくない…そんなチェーンソー持った狂人なんか……


「ん?ちょっと待ってくれ、さっきのを見る限り、それでジャックの顔がわかるんじゃないか?」


そう問うと、カルマは両手(もろて)を挙げて首を振った。


「残念ながら連中の関係者と思われるやつは全員がフードを被ったキャラクターでね…しかも中身が見えないのさ。あ、でも1つ連中について分かることがある。」


「なに?」


「連中は小間使いを除いて、主要となる…幹部?みたいな連中は14人だ。おそらく。」


リドウィンは意外にも少ない数に驚く。

もっといるかと思ったが。


「トランプの1から13のキングまでと、ジョーカー、数が一緒なんだよ。それにそうすれば11番目(ジャック)もいるしね。」


"トランプ"という名前に掛けているのか、それとも名前にちなんでトランプにしたのか。どちらにしても重要な情報だ。



「これ、モンド総長に言わないと…‼︎」


「ダメだよ〜これは俺達の仕入れた情報なんだから‼︎」


「そ…そんなこと言ってる場合か⁉︎」

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