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トラストルノ  作者: なさぎしょう
輪舞曲
67/296

SOUP本部 SideH 地図無き城2


そもそも、SOUPがたかだか4人の即戦力にもならないような生徒を呼び出すなんておかしいのだ。考えうるのは、連中(トランプ)の方からなんらかの接触および提案があったのかもしれない。


とにかく、SOUPは信用できない。

情報を得たいのなら、もっと信用のできるやつがいる。


「一通り案内はこれくらいだ。先程の部屋に戻るかね?」


「いいえ、少し外で風に当たりたいので…ちゃんとしばらくしたら戻りますよ。」


「わかった。今日か明日かはわからんが、何にしろ連中は近々くるだろう。君らにはここにいてもらわねばならないから…部屋を準備させている。」


「部屋に戻ったらロボが案内してくれるんですね。わかりました。」


コート氏は名影達をベンチなども設えられた広大な原っぱに案内し終えると、足早にどこかへ歩き去っていった。


「やっぱり人柄とかを見てたんだわ、たぶん。」


「コート氏が直接案内してくれた理由?」


「そう。」


名影はコート氏をしっかり見送ると腰の辺りから小型の無線機のような物を取り出し、それから端末を出してエアスクリーンを映し出す。


「何してんの?」


「私の隠し駒…かな。」


名影は端末でどこかに電話をかけつつ、さらにもう1つ大きめの端末を取り出す。

そうこうしているうちに、エアスクリーンには人が映っていた。


「はいほーいもし?」


エアスクリーンに映し出された人物は色白で細身の青年。薄ピンクと黒のプリン頭で、デスクチェアの上に膝を抱えて座っている。さらに口には棒アメ。

映像電話(エアフォン)に出る態度とはおよそ思えない。


「なんだ…あのTシャツ…萌⁇」


アレイが奇異なものでも見るように、画面の中の人物を見る。


「ねぇ、頼んでたの出来そう?」

「とりあえず2つともやったわやったけど、厄介だでー」


名影以外の3人が"萌"と書かれたショッキングピンクのTシャツに気を取られているうちに、画面の向こうの青年は片手で横にある旧タイプのキーボードを高速タイプする。

とほぼ同時に名影の大きめの端末には何か(・・)が送られてきていた。


「どう?やっぱり色々隠してるっぽかった?」


「隠してるとかいうレベルじゃないが〜、ここ掘れワンワン、どこ掘ってもざっくざく…とな‼︎」


青年が大袈裟にボードをタップした数瞬後、名影の大きめの端末に"全受信終了"の文字が出る。


「でもな〜SOUPの御方々は固執して一個を隠そうとするあまりに他の大きな部分が露見しすぎだーよ。」


「それは…問題ね。」


名影がちっとも問題だと思っていない風に、笑いながら返す。


「まさしく‼︎頭隠してなんとやらさ〜」


さきほどから3人には聞きたいこと、ツッコミたいことが山とある。しかし当の名影と青年は得たなにかしらの資料に夢中で説明もなにもしてくれない。

だんだん真城が目に見えて不機嫌になってきた。


「ねぇ…誰なの、そいつ。」


真城は名影の隣に腰掛け、名影の袖を引っ張りながら聞く。すると名影はようやく端末から顔を上げ真城を見る。


「彼はね………都合の良い駒よ。」


あまりにはっきり"駒"呼ばわりするので一瞬3人はおし黙る。


「ブハッ…駒って‼︎ひっどいぜ〜。」


しかし言われた本人は意に介さず、といった風に笑い飛ばす。


「嘘うそ、ちゃんと紹介するわね。彼は"キャンディ"、もちろんこれは偽名(ハンドルネーム)。」


名影が途中まで紹介すると、スクリーンの中の青年ーーキャンディが引き継ぐようにおどけた調子で話し始めた。


「キャンディ君です‼︎よろっち。普段のお仕事は探偵のお手伝い、稼ぎ頭の副業はハッカー。れいちむとはお友達になりたい、と思ってるよ?」


「れいちむ⁉︎」


真城がぎょっとしながら聞き返す。


「そうだでー。君はあれだで?あのー…れいちむのコレだ‼︎」


キャンディはそう言うと、小指を立て、得意げに笑う。真城は珍しく顔を赤くすると、俯いてしまった。



「あ、ねぇ…これどういうこと⁇この建物、地上が8階って…どう考えてもあそこは4階くらいしか無かったわよ?」


キャンディが自分とのことで真城をいじっている間も端末に送られてきた資料に目を通していた名影が、ふいに顔を上げてスクリーンのキャンディを訝しげに見やる。


「やだなぁ…睨むなよん。そりゃ組み換え式になってんのさ‼︎建物全体がこう、レゴとかみたいにさー……ってか地図も載せてあるよーん。」


そう言われて、名影がファイルを開くと、そこにはトラストルノ全体の見取図や、それぞれの建物の構図が 細かに書かれている。


「ねぇキャンディ?これ売ればどう?一生働かずに生きていけるよ。」


「SOUPの地図?そりゃ一生働かずに済むだろうね。そのかわり一生そのものが短くなりそうだけどもーね。」


SOUPの地図?


「そ、それ…SOUPの地図なのか?」


アレイと伏も驚いて端末を覗き込む。


「地図じゃけど、完璧からは程遠いがね〜。れいちむに小型振動受信機(バイブレシーバー)持ってってもらってね、それで得た情報と、あとはSOUPのそれぞれの機関にハッキングして得た情報と擦り合わせて地図を作っていったのさー。」


なるほど無線機のようなものは振動受信機(バイブレシーバー)だったわけだ。それにしても、このキャンディという男はすごい…

こんなにわかりやすいSOUPの地図は初めて見た。


「で、こっちの資料は?」


真城がもう1つの資料にも目をつける。


「あぁ、そりゃ俺のゲーム戦績さぁね。」


ゲーム?伏と真城は首をかしげる。

資料には確かにゲームの1シーンと思われる画像が大量に添付されている。1番はじめの画像には"SURVIV"と書かれている。


「ネット戦ばっかだったからー、実戦の方はてんで知らんがって…でもそれっぽいのはおったがって。」


キャンディは資料をとばし、奇妙な3人のキャラクターが描かれたページが出される。


「今日はまだ動いてねぇが〜。」


「そのようね。」


伏がゲーム画面を覗き込んで、またわからないという風に首をひねる。


「このゲームが、今回の件と何か関係あるの?」


すると、その問いを待ってましたとばかりにキャンディが意気揚々、説明を始めた。


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