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トラストルノ  作者: なさぎしょう
輪舞曲
60/296

SOUP本部 SideH 作戦


なんつータイミングで戻ってきやがる。絶対聞いてただろ‼︎

アレイは心中で毒突く。


「衣服と腕章の準備が出来たのでとりあえず渡しておこう。着替えはあとで更衣室に案内するとして、西校(ウエスト)の生徒諸君には守備隊の面々との打ち合わせがてら施設内の各所についての説明等をベラから受けてもらう。」


「では西校の皆様はこちらへ。」


西の生徒達はモンド守備隊総長に連れられ部屋を出て行く。残った東校(イースト)の生徒達はコート氏と共に部屋に残される。


「さて、君らには私から諸々の説明を行うとしよう。」






「モンドさん‼︎」


「ベラと呼んでちょうだい。」


守備隊総長のイザベラ・モンドは考えが読みづらい女性だった。表情にほとんど動きがない。

フィリップはモンドのつれない態度にどうしたものかと頭を悩ます。できれば親しくしたいのだが…

アリスは先程から心ここに在らずといった感じで、カルマはいつも通りふわふわとしている。なんとなくやる気や覇気を感じないのだ。

リドウィンが前を行くフィリップとモンドに並ぶように横に来る。


「ここの施設はトラストルノで最もセキュリティの精度が高いと聞きます。たとえ今巷を賑わせている連中とはいえ、そんなにあっさり入ってこられるでしょうか?」


「どんなに完璧に見えるものにも必ず落ち度がある。」


「それはまぁ…そうですね。まぁじゃあ連中が入ってこれたとしましょう。そんなセキュリティを乗り越え内奥にまで入り込まんとするような連中相手に、我々PEPEのいち生徒ごときでは不足ではありませんか?」


「おい‼︎何言って…‼︎」


リドウィンの唐突な発言にフィリップが怒気を孕んだ声で叱責する。

しかし肝心のリドウィンは、モンドに意見を求めるように視線を逸らさない。


「リドはなんだかんだで私たちより長く生きてきてるのよ。落ち着きが違うわ。」


ふと、アリスがそんなことを漏らす。


「そうだねぇ〜」


カルマは興味なさそうに返す。

カルマはもっと他の何かが気になるのか、キョロキョロと辺りを見回している。


「ねぇ、さっきから何をキョロキョロしているの?」


アリスがイライラしながら問うと、カルマは「うーん?」と言いながらアリスの前に躍り出て、クルリと半転しアリスの方を向き後ろ歩きを始める。


「だってさ、妙じゃない。僕らがそんな難題を押し付けられていることより、東校(イースト)の人々が兵を欲さなかったことより、なにより奇妙だよ、君。」


「何がよ。」


「人だよ。」


「は?人がなによ。」


アリスが問うと、カルマは突然大袈裟に両腕を振り上げよく通る声で…そう、まるで舞台の上の役者かのように台詞(ことば)を紡ぐ。


「いないんだよ‼︎人が1人もここにはいなくって、そのくせ人間のための施設はしっかりある‼︎今日はみんなのお休みの日か、さしずめみんな()んでいったのか‼︎」


「ちょっ…‼︎うるさいからやめなさいよ‼︎」


何故か自分が悪いわけでもないのに、アリスは恥ずかしいような思いがして、カルマをたしなめた。


「問題ありませんよ、この階は何か特別な会議でもない限りあまり使われない。おかげで多少騒いだところで迷惑にはなりません。まぁもっとも防音はどの部屋もきっちりしてますから、関係ないですが。」


カルマの仰々しい叫びに、モンドが単調に答える。ことばの1つ1つに抑揚がない。



各階の案内をされるが、どの説明も明らかに肝心な所を端折っている感じがした。そもそも、この棟の説明だけされても…ここなんてSOUPのほんのわずかな一部分でしかないだろう。


「この案内に意味はあるのかしら…」


アリスはため息を漏らす。


「いやぁ、肝心なことってのは存外目の前にあっても気づき辛いものなのさ。」


カルマがフォローなのかもよくわからない言葉を口走る。


「それでは、守備隊の本部へ向かいます。」


モンドの声掛けにより、一同はようやく隣の建物へ移る。その建物は他ほど高くなく、しかし他よりもいっそう頑丈そうに見える。


「遅れずついてきてください。」


モンドはそう言うと、先ほどまでよりも足早に建物内へ入り、他の部屋などを案内するでもなく、エスカレーターに乗り込んだ。


「これから、地下の作戦本部へ向かいます。」


いよいよ、天下の守備隊とご対面となるのか…

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