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特別な生徒 X
同じ顔、同じ身体、同じ声音。
でも全ての"私"が違う人生を歩んでいく。
いや、正確には"私"ではない。私ではなくて誰かのX番目で…あの子も誰かの、おそらく3~4番目だ。
それでもあの子は知らない。自分が誰かの模造品だなんて知らない。
知らない、だなんて幸せな人。
元を断たねば。そうすれば、あの子も、私も、特別な1人になれる。
最初はあの子が正規品だと思った。でも違った。四年前に殺された彼も、模造品だと知った。正規品が模造品を壊した、なんて話も聞く。…それなら尚更、早く始末しなくては。
でも、見つからない。
みんな優しい、毎日が少しずつ楽しくなっていく。
見つけなければ。離れがたくなるまえに、自分が自分であることが苦しくなる前に…そしてぶっ壊してやるんだ。