SOUP本部 SideH
万全のセキュリティ。少なくとも今この建物に入るまでのあれやこれのチェックは落ち度がないように感じた。
「こんなところに入り込むとか無理だろ…俺らの出番なさそう。」
アレイは終始キョロキョロと辺りを見回し驚愕していた。
警備システムもさることながら、旧時代のようにわざわざ警備員まで立たせて見張っている。機械の目と人の目によるによる二重監視。
SOUPが寄越したのであろう無人自動車できたはずなのに、例外なく中を調べられたり、車体下なども調べられた。
当然対人でも同じことで、まずは手を端末に置き指紋などを記録される。それから個人の持つ管理番号を入れ、今度は衣服内外のチェック。
「面倒くさいねー…」
全てのチェックを終えた頃には伏とアレイがバテていた。身体的には言うほど疲れないのだが、なんというか、メンタルにくる。
『失礼いたします。名影零様とご学友の方3名様でしょうか?』
なにやら白基調で小学生位の大きさの可愛らしいロボが声をかけてきた。ロボというよりなんだかぬいぐるみっぽい。
「えぇ、そうです。」
『ではお手数ですが、お名前確認させていただきます‼︎ 名影零様、女性、18歳。お間違えないでしょうか?』
「えぇ、合ってます。」
『伏舞人様、男性、14歳。お間違えないでしょうか?』
「間違いないです‼︎」
『アレイ・ディモンド様、男性、16歳。お間違えないでしょうか?』
「お間違えございません。」
『真城潤様、男性、18歳。お間違えないでしょうか?』
「はい。」
『ご確認ありがとうございます‼︎それではご案内いたします‼︎』
この長ったらしい確認は毎回行っているのだろうか。年齢まで聞かれるとは思わなかった。
いや、もしかしたらその問いかけによる反応の仕方を見ているのかもしれない。
「それにしても広いな。」
アレイと伏は忙しなくキョロキョロと辺りを見回している。
エレベーターもロボの認証なくては動かなかったり、逆になぜか動く廊下があったり。とにかく整然としているようで、なんだか雑多な感じもする不思議な空間だった。
『24階まで上がります。』
エレベーターはなんだか少し建物全体のイメージとの間にギャップがあった。高級感あるホテルのエレベーターのようになっているのだ。
「なんかさ、ここ色々と薄気味悪いんだけど…」
真城の言うことに3人とも頷く。
極端な部分的統一と、全体的不一致がなんだか気持ち悪いのだ。本部は東西南北のちょうど中心辺りにあるうえに、各校のSクラス出身者などで占められているために、さまざまなお国柄が出ているのかもしれないが、エレベーターまでこうとなると、何か別の理由があるのではないか、と疑ってしまう。
『24階に着きました。お部屋までご案内いたします。』
24階のフロアは会議室の集まったフロアのようで、廊下側が曇りガラスになったもの、扉にすら窓の無いもの、広いものから、数人分ほどの狭いものまで様々な会議室が並んでいる。
その中の1つの前で案内ロボは停止し、クルリと胴体部分をこちらに向ける。
『こちらになります。お席に名前がありますので、ご自身のお名前のあるお席にお着きになりお待ちくださいませ‼︎』
最後まで丁寧で、場違いともとれるくらいの明るい案内をし終えると、ロボはすいーと居なくなる。
名影を先頭に部屋に入ってみると、そこには長方形に並べられた長机と6脚の椅子がある。扉の奥側の2つの長机にそれぞれ[Nakage][Mashiro]、そして[Fuse][Dymornd]とホログラムで表示されている。
逆側の4席や他の席には名前の表示が無い。
そのまま指定の席に名影達が座ると、名影達の分の表示も消えた。どうやらあくまで席を教えるための表示であって、相手に名前を知らせるための表示ではないらしい。
「これって何人来…る……」
真城がちょうど名影に今日の参加者について質問しようとしたところで、部屋の扉が開き4名の若者が入ってきた。
旧欧州系と思しき人物が男女1人ずつ、あとの2人はなんとも判断がつかない。歳もなんとなく分かりづらい。1人は見る限りでは西系の顔立ちには見えないうえに何だかすごく歳上に見える。
もう1人は男とも女ともとれる顔立ちの人で、とにかく精巧な顔立ちをしていた。年は14〜5くらいだろうか、とにかく若いと思う。その人はなんだか顔全体が作り物のようにさえ思える。
「どうも。」
1番はじめに部屋に入ってきたプラチナブロンドの髪の男子生徒がどうやら首席のようで、名影の前に座る。そして挨拶しながら名影にウインクしてみせた。
「チッ…‼︎」
真城が一気に不機嫌になる。
始まる前からなんだか不安要素の多い幕開けとなりそうだ。
コツコツコツ…
そして扉の外から足音が響いてくる。