タレコミ
最初の呼び出しからしばらくして、また4人が集められた。
芦屋校長と面と向かって思ったが、この人もなかなか苦労しているらしい。普段は驚くほど若く見え、女性教員達がこぞって羨むほどの美肌なのに、今日は疲れが肌にも表情にも溢れ出ている。
「君達をまた再度呼んだ理由は言うまでもない。まず、1つ目の任務。"トランプ"の確保もしくは排除について、近々絶好のチャンスがあるかもしれないそうだ。」
脅威の対象との対立…か。
名影も真城もアレイも、それをチャンスと言って良いものか顔をしかめる。
しかし伏だけは「おぉ早速」なんて頷いている。なんというか…どんな状況にも即座に適応していく能力はすごい。
「今回入ったタレコミは"トランプ"の中でも特に目をつけている数人に関しての情報だ。」
そもそも、校長はじめPEPEにしろSOUPにしろ、幹部連中はトランプの実態を掴めているのだろうか。こちらにおりてくる情報が少なすぎる。
何か隠しているのでは、と疑ってしまいたくなる。
「まずは連中の仲間内でジャックと呼ばれているらしいやつについての情報。そちらは西の連中が対応するそうだ。」
なぜいつも西が優先されるのだ、とアレイなどは言いたげだが、話が進まなくなるので口をつぐむ。
「もう1つは特に目をつけていた3人組についての情報だ。傭兵かと思しき男と、腕利きのスナイパー、そして……"死神"だの"ジョーカー"だのと呼称されている奴の3人だ。」
明らかに東の方が大変じゃないか?
そんな目をつけているやつならわざわざ子供なんぞに頼まずに自分達で捕物でもなんでもすりゃいいのに。
「特に注意すべきがこの"死神"だ。」
そんなの言われずとも、聞いた瞬間から分かっている。
「なんでも日本刀などの旧日本的武器を使いこなす手練れらしい…首を一刀両断、なんて死体も上がっているとか。」
なるほど?つまり武器的な観点から見て、普段から日本刀を使っている私や真城、それと訓練をしている伏やアレイらを擁する東がやったほうがいい…と。
さらに"首を一刀両断"という言葉。ナギの事件の裏に、その3人がいる可能性についてを考慮したということか。