表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラストルノ  作者: なさぎしょう
序章
5/296

特別な生徒 5


伏舞人(ふせまいと)は148㎝の小柄な体格と、童顔に似合わず態度がでかい。決して悪い意味ではなく、何者にも臆することが無いのだ。

自分の中でのルールがしっかりしている。間違っているものを間違っていると指摘できる。無法地帯のトラストルノにおいては大切なことだ。それになにより、責任感も強い。


「次席とか首席とか関係なく、2人は大切なクラスメイトだよ?本当は先輩だけど、2人が望むなら年齢なんて関係ない、友達だよ‼︎」


芦屋(あしや)とは幼等科の頃から知り合いで、家同士は犬猿の仲なのに、そんなことはお構いなしで(せい)に懐いていた。いつどんな時でも隣に居て一緒に歩んでくれたり、時には引っ張ったり、押し上げたりしてくれる親友。

名影も(ふせ)のことは一目置いている。別に家柄が云々とは関係なく。伏舞人(ふせまいと)という人間が持つ力強さ、人を惹きつける力に、憧れがあるのだ。


とは言っても。現在Sクラスでは最年少14歳の伏。若干クラス内で甘やかされたこともあり、普段の日常生活においてはアレイといたずらを仕掛けたり、自由奔放なところもある。

可愛げもあり、それでいていざという時の信頼もある。Sクラスの裏番長なんて呼ばれることもあった。


「暇だな〜」


ただ伏もこの講義は暇で暇で仕方がなかった。毎度のように芦屋(あしや)から回ってきたメモクイズを解いて、答えとしりとりになるように問題を書いて、次のシヨンに回す。講義中はそれでも退屈さを紛らわしきれない。

今日は朝からずっと眠いのか欠伸連発で、今も腕まくらに顔を伏せている芦屋(あしや)を起こそうか悩めるところだ。

でも…暇だ。


「ねぇねぇ、聖くん。おーい。」


とりあえず声をかけてみると、突っ伏したまま腕の隙間から睨んでくる。芦屋は端正な顔立ちをしているのに、いつも眠そうだったり、だるそうだったり、まず上機嫌な時が少ないせいで友達が出来辛い。本人も別に数人いればいい、と言っているのだが…


(そうすると、聖くんに声をかけたがっている女の子達はタイミングを掴めずに卒業していくことになりそうだな…)


くそぅ…羨ましい。伏だって顔は悪くないのだ。童顔でちょっと(・・・・)背が低いだけで。


「この話、暇だねー。」


睨む芦屋に小声で言うと、「んなことで話しかけんな」と余計に鬱陶しそうにされる。

その態度に少しむかっぱらがたって椅子をガンガン蹴り上げる。芦屋は無視を決め込んでいる。

…そんなに疲れているのだろうか?






恩寿音(おんじゅね)のところにクイズメモが回ってくることはほぼ無い。芦屋に始まり、名影を除く全員のところに反時計回りでメモが回ってくるのだが…その渦巻きの1番真ん中にいる恩のところには稀にしかメモが到達出来ないのだ。まず真城で大幅に時間を食う。それを軽減するために、ヘルプとして真後ろに名影が控えているが、本人が極力自分で解こうと努力はするのでそこでメモが滞る。次々、芦屋の気まぐれでメモがいくつも回されるが、大概真城で止まる。

それからロブ。彼は解くのにさほど時間はかからないのだが、問題作りに凝るのだ。その影響でアレイがロブからの難問につまることとなる…とここでいつもチャイムが鳴って終了だ。

まぁそもそも講義中に回すべきものではないから、クイズを解けないことにはなんの不満もないのだが、クラス全員が参加しているものに自分だけがいつも参加出来ないことには一抹の寂しさを覚える。



「まぁでも良いクラスだよね。」


恩はロブとよく今のSクラスについて話す。

首席が優秀なことも、次席が実は苦労家なことも、でも1番に思うのは"人間味のある暖かいクラスだ"ということ。とうぜん飛び抜けた優秀者が多いせいもあって、Sクラスは端から見ていても、なんとなく殺伐としたイメージがある。

しかし、今のSクラスはほんわかとした暖かいクラスだと思う。


願わくばこのまま、この暖かいクラスのまま自分は卒業していきたい。あと二年、何事もなく…

四年前のようなことはもうこりごりだ。

むしろあの事件からよく立ち直した。それもこれも首席の、名影のおかげだ。

だから、どうかこのまま…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ