リスト2
今日はなんの公演も無し。明日も無い。
久々の連休…とは言っても亜細亜座の方に行かないだけでトランプの仕事はある。今日もこれからケイトやシンクと一仕事片してこなければならない。
でも、忙しいのは良い。
余計なことを考えなくて済む。
「えっと…◯丁目◯番地の◯◯…」
無人自動車の液晶に行き先を打ち込み、カードを挿入する。代理戦争組織がいわゆる公共事業的に運営するあれやこれは、物々交換するわけには行かないので、大概どこかで金やそれに変わるカードの類を手に入れる必要がある。
となると必然的にトラストルノに住まう大多数の人間は、これらの公共物は使用できないことになる。そんなことで公共などと言って良いものか…
『それでは、◯丁目◯番地◯◯の"レストラン「ロレンス」"に向け出発します。』
軽快な声が響く。男とも女ともつかない声音だ。
それにしても、極秘書類であるクローンリストを手に入れようだなんて、また突飛なことを考えたもんだ。
トランプの実態が、その実掴みきれていないので、誰が言い出したのかは知らないが、そんなもの手に入れてどうする?
結局トランプにいる人間の中にだって、本当の個人中心社会の確立ではなく、単に「特別なことに参加している」とか「人より優位に立ちたい」とか、そういった理由ではいっているやつがいるのだ。
リストだってそれらの地位を手に入れる道具としてつかうつもりなのではないか…
「まぁもっとも、ケイトがいち早く見つけようものなら即座になかみを見るだけ見て捨ててしまうんでしょうけど。」
彼について知ってることはさほど多くはないが、それでもわかったことがある。
彼は決まった主義主張とか、そんなものには一切興味がなくって、ただ快楽的に任務をこなし、その達成を悦んでいる。
シンクが歯止めになってくれていなければ、行きすぎた行為で仲間から潰されていたのではないかと思う。
「僕はね、ケイトっていうんだ‼︎シンクと合わせて、3人で仲良く頑張っていこうじゃないか、友よ‼︎」
初めて会った時の印象は誰よりも鮮明に記憶に残っている。可笑しな人だと思った。
『もうじき"レストラン「ロレンス」"に到着致します。』
ジェスターは窓の外を見る。
独特な雰囲気を纏ったアラビアン風な建物が見えてくる。レストラン「ロレンス」だ。
あの2人はもう着いているだろうか。