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トラストルノ  作者: なさぎしょう
序章
41/296

嗤い話


これは果たして悲劇なのか。はたまた喜劇なのか。

洗いざらいに話されてなお、頭の理解が追いつかない。

つまるところ、いま俺の目の前に座っているのは人間のクローンだと。そして今朝死体で見つかったのもクローンで、もしかしたら殺したのはその元になった人間かもしれない…がSOUPによって殺された可能性もある、と。


「さっぱり訳が分からねぇな。」


思わず本音を漏らすと、名影と真城も「だろうね」と言い放つ。


「いまの話、真城は理解できたのかよ。」


「俺はそんなくだらない話に興味ねぇよ。名影零は今ここにいて、ナギという人間は死んで、犯人がどっかにいる。それだけで十分だ。それがクローンだろうがなんだろうが知ったことか。」


こいつの、こういうところは本当にすごいな…。

実のところ、この2人はそういう関係(・・・・・・)だろうというのは周りがなんとなく思っているだけで、この2人の口から直接聞いたことはない。

名影は特に何も言わないし、真城は名影を「特別」とは言うが、いざ彼女なのかと聞くとうやむやに返答してくるのだ。

しかしいざこういう時の反応や対応を見ていると、2人は付き合っているのだろうし…悔しくもお似合いだと思う。


「でも、仮にSOUPがこんなことやってんだとしたら許されざることだろう。そもそも例外てきに、且つ秘密裏に運営されている組織が、表にいる人間に対して手を下すなんてのは。」


「そもそもナギは表の人間じゃなかったのよ。」


いや、そういう問題か?

どんな理由だろうがなんだろうが人を殺していい、なんてことはないし、そんなことに正論などない。


「ところで質問なんだけどよ、その…クローンってのはお前やナギの他にもいるのか?」


「さぁ、知らない。」


そこで名影はふと思い当たったように付け加える。


「でもそもそも私は名影零じゃないかもしれないわよ?なりきってる別の誰かかもしれない。もっと言ってしまえば、あれはナギではなくて名影零で、私がナギかもしれない。」


「でも、いま零自身は少なくとも自分を名影零だと思っていて、そしてここにいるんだから、間違いなく君は名影零だよ。」


またも真城は言い切る。

俺の聞きたかった本筋からはズレたが、つまるところいる、ともいない、とも言えないわけだ。


「なんか…ヤバイことに巻き込まれていってる感じがするな…」


極力平穏に生きたい。

本当なら、PEPE(ここ)も辞めて、トラストルノも出て行きたい。その我儘はずっと心の中にある。


「なぁ、ナギを殺したやつを探すのか?」


「……探すっていうか…知りたいのよね。」


だろうな。


「まぁじゃあもし元ネタになったやつが犯人だとしたらとっ捕まえてそのあとどうする?」


トラストルノには司法や裁判所はない。全ては個人の判断である。


「それから、仮にSOUPが殺ったんだとしたら?」


ただ犯人が知りたいだけならしょうがない。しかしなんらかの制裁を加えるつもりならば、SOUP相手にもそれなりに対応できる力が必要になる。


「…どうしよう。」


名影の口から出たのは、あまりにもか細く、頼りない声。ことはあまりにも重大な方向に転がり始めているらしい。


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