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トラストルノ  作者: なさぎしょう
序章
40/296

亜細亜座に依りて


亜細亜座(ここ)には本当に多種多様な人々が訪れる。

個人主義のトラストルノにおいて、最大の娯楽は個人投稿の動画およびテレビ、もしくはラジオ音楽だ。逆に集団で無ければ出来ない劇やサーカス、師弟関係として伝えていかなければならない伝統芸能系は続々と衰退、消滅の一途を辿っていた。

そんな中突如として現れたのが"亜細亜座"という芸能一座である。


はじめは8人で各地を遊泳し、時には戦地にまで赴くいわば慰安公演も行う旅団のようなものであったと聞く。さらに今とは違い旧日系の出し物しか無かったそうだ。

しかし、何があったかある時、彼らは1人を残して全員が死亡もしくは行方を眩ましてしまったのである。

1人になってしまったのは、8人の中でも1番最後に仲間に加わり、"亜細亜座"として立ち上がる際には唯一の裏方であった少女だった。つまり彼女には披露できるような芸が1つとして無かったのである。


しかし、少女は勤勉だった。

仲間が残したノートや、常連数名が撮っておいてくれたビデオ、そしてなにより自分の記憶を頼りに7人がやっていたあらゆることを身につけた。

彼女の独壇場となってしまった"亜細亜座"だったが、それでも常連は変わらず応援し続け、そして彼女もまた、頼まれれば何処へでも赴いた。


そんなある時、2人の少年が彼女の元を訪れる。

2人は"亜細亜座"に入れて欲しい、そしてそこで京劇をやらせて欲しいというのだ。


少女はしばし逡巡し、しかし彼らを諸手を挙げて迎え入れた。

彼らの加入は結果として"亜細亜座"の復興と繁栄に大きく影響し、気づけば1年で公演依頼は5倍に膨れ上がり、加入希望者も列を成すようになっていた。



ところで、彼ら2人の少年と、少女はとある約束を交わしていた。

座長など肩書きによって責任を背負う役職を作らないこと。それでも交渉などの場は必要になるので、事務的な手続きなどの裏方は少女が原則行い、客引きや挨拶などの表方は少年達が行うこと。

そしてなにより……

人種その他による差別は絶対に行わないこと。


この約束は今日に至るまで、比較的しっかりと守られている。





ただ、この"亜細亜座"には人には言えない秘密を持った訳あり人も多い。


かくいう少女も、そして少年達もその例に漏れない。


少年達は少女に隠したる思いが。

少女は少年達に隠したる思いが。



彼らがたった2人で亜細亜座(ここ)に流れ着いた理由(わけ)はね…


少女が辛くとも亜細亜座(ここ)を潰させなかった理由(わけ)はね…





………………。

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