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トラストルノ  作者: なさぎしょう
序章
39/296

亜細亜座3


「あれ?ニコ‼︎今日も姐様(ねぇさま)に御用?」


ケイトはふと後ろから珍しい呼び名で声をかけられる。ニコラス、ケイトの本名で唯一呼びさしてくるのは彼女しかいない。とは言っても本名を全て知っているわけではないのだが…


「やぁ、ミナ‼︎久しぶりだね〜。そうだよ、今日も鈴に用事があってね、まぁ僕ではなくて(じん)からの伝言役なんだけど‼︎」


「え⁉︎あ、あぁ神さんの…」


ミナはあからさまにビクつくと、周りをチラチラ見る。


「大丈夫だよ、神は今日来てないから。」


そう言うと胸をなでおろす。

神、とはシンクの本名でこちらも普段は聞きなれないし、呼びなれない。シン、となら呼ぶのだが。

彼女は本名をもじった名前は知っているし、その呼称で呼びはするがフルの本名は知らない。それを知っているのは僕らお互いだけ。


それにしてもなんでこの子は僕とシンでこんなにも極端に態度が違うのだろう?僕はかなり、懐かれている自信がある。

一方のシンは随分恐がられているようなのだ。

そりゃ僕ほどは線が細くないっていうか、しっかりした体格だし、目つきも鋭めではある。しかし本人は戦闘などの時を除けばすごく強くて優しく頼りがいのある男なのに…

まぁ割とモテてもいるようだし。

子供からはおっかなく見えるのだろうか。


「鈴姐さまにお茶をおもちするの、一緒に行ってもいい?」


「あぁもちろん‼︎」


ミナと一緒に足早に楽屋に辿り着くと、楽屋内にはすでに人の気配があった。どうやら彼女の方が早かったようだ。


「失礼いたします‼︎」


元気よく挨拶をして入るミナに続く。中では明らかに女物ではなさそうな"羽織り(コート)"を着て、何かの書類に目を通す(ジェスター)がいた。


「やぁ。」


「どうも。」


鈴は楽屋で待っていなかったことなど、自分の意にそぐわないことがあっても基本的には咎めない。ケイトには、それが優しさというより無関心に思えて仕方がなかったが、真意は定かでない。


「お茶をお持ちしました。」


ミナが丁寧に急須(ポッド)湯のみ(カップ)を使ってお茶を入れ、鈴の前に差し出す。そして二言三言、今日も客は上機嫌でしたよ、とかなんとかそんなことを話し、ケイトに気を使ったのかすぐに楽屋から下がってしまった。


「それで、なにか?」


鈴は襟元を正すと、ケイトに向き直り聞いてくる。


「いや、先日の件さ。見事に目を欺き通せそうだよ。それから聞く限りじゃ第一発見者は首席の子だそうだよ。ちなみに発見されたのは翌朝。」


翌朝、という単語を聞いて鈴はなんともいえない複雑な表情をした。もっと早くに見つかって欲しかった気持ち半分、それでもなんとか見つかって良かったという気持ち半分、といったところだろうか。


「でね、ここからが本題さ。どうも今しがた終わったPEPEの幹部会にSOUPの名影長官が来ていたらしい。話の詳しい内容まではまだ入ってきていないが、やつら僕らとやりあうつもりかもしれない。」


「それに備えろ…と。」


「まぁね、正直メンバーが割れるとはおもえないんだけど…念には念をって言うだろう?」


どこまでも慎重でなければならない。シンはいつでもそうだ。

僕は割と適当な感じなんだけど…


「それは、偽物(クローン)殺しについて我々(トランプ)の関与が疑われてるの?それとも、例の逃走劇についての関与が疑われてるの?」


「いやぁ、たかだか生徒1人の殺人に名影長官殿が動くとは思えない。たぶんそっちを疑ってんのは(あそこ)の芦屋くらいだろう。SOUPが組織ぐるみでかかってくるとしたらロミオとジュリエットの逃走についてさ‼︎」


死にたくはない。

しかしそれでも、今の状況をケイトは少なからず楽しんでいた。ワクワクドキドキソワソワ…色んな感覚が湧き上がる。





「ところで、僕は君にずっと聞いてみたいことがあったんだ。これから忙しくなりそうだしいい機会だから聞いてみたいんだが…このあと時間大丈夫?」


ケイトが珍しく改まって聞いてくる。

別にこのあとの公演は夜のだけだから構わないが…


「いいけど、無理難題を押し付けるような話は無しで。」


「もちろんさ‼︎でもここじゃなんだからさ…うーんどこか喫茶とか無かったけか?」


あるにはあるが、あそこは旧日系人を好まない。レストランもあるにはあるが、あそこは逆にどんな人間がいるともしれない。なら…仕方がない…


「私の家で良ければ来る?すぐそこだから。」





「…え‼︎本当に⁉︎行くよ、行くとも‼︎」


思ってもみないお誘いだ。


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