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トラストルノ  作者: なさぎしょう
序章
34/296

混沌 そして 瓦解2


息子達は似て非なる性格に育った。

どちらもそこそこ要領良くなんでもこなすし、戦闘訓練の成績も常に上位にいた。ただ、家での過ごし方や学校での噂を聞く限りでは、兄の類が努力家の秀才タイプ、弟の聖の方は面倒臭がりでも結果を残せる天才タイプ。面倒見のいい兄と、基本的には自己中心的な弟。

パッと見聞きする限りでは2人とも"出来のいい息子"で一括りだが、実際のところ出来の良さは兄の類が勝っていた。

そしてそれを、弟の聖本人も自覚している。

かわいそうなことに、聖は見た目も性格も父親の俺に似ている。逆に類は外見の雰囲気も性格も母親似だ。



四年前、そんな似て非なる兄弟の片方が死んだ。


それも、父親である俺の領域内(テリトリー)で惨殺死体として見つかった。

俺も妻も憔悴しきって、そして俺は随分と聖にキツく当たった自覚があった。そのせいで未だにあいつの心のどこかに"類ではなく、自分が死ねば良かった"といった類の、類と自分を比較して(ひが)むような思いがあるようだ。

それでも、あの新しい首席。名影の偽物(クローン)の娘のおかげで最近は随分と柔和な印象になった…と思いたい。


しかし、また事件だ。

四年前と同じ奴だろうか?

それなら絶対に逃すわけにはいかない。

捕まえてやる…どんな手を使ってでも。





「それでは会議を始めます。」


これ見よがしに仰々しく造られた円卓に東西南北各々の校長に、名影長官、進行役、そして思い思いに校長達が連れてきたのであろう教員兼構成員。

名影長官がいるというだけで、なんとなく場が締まり、そして重くなっている。


「えぇ…それではまず、名影長官より重大なご発表があるとのことですので、伺いたいと思います。」


「あの進行役、進め方がなってないんじゃないか?新しいのを雇いたまえ。」


名影長官は隣の芦屋に耳打ちすると、ニコリと大げさに微笑んで、立ち上がる。


「各校の校長方、そして本日ご参加賜った方々に色々と挨拶をしたいところではありますが…本日はそれらを省いて本題に入らせて頂こうと思います。」


全員が沈黙の中に沈み込む。

どんな話かは全く想像がつかないが、良いことでないのは十分に想像できるからだ。


「まず、1つ目。最近巷でも名を聞くようになった、あなた方も聞いたことがあるだろう…"切り札(トランプ)"というテロ集団がいるが。その構成員という思しき男が2名捕まった。これから連中について聞き出すつもりだが、その前に彼ら2人が貴重な情報を話してくれた。なんでも…




SOUP(スープ)内に裏切り者(スパイ)がいる…と。

ことの信用性に関してまだはかりかねるが、あり得なくはない話だと思っている。そこに関連して、PEPEの警備をもっとより強固なものにしていきたいと考えている。」


ここで名影長官は深くため息をつく。


「とはいっても、すぐには無理な話だな。」


次に名影長官は、一同をぐるりと見回す。相当覚悟のいるような事態が起こってしまったのだろうか。


「次に…これが1番肝心なとこなのだが…みな落ち着いて聞いてほしい。」


深く息を吸い、ゆっくりとはく。


研究施設LIFE(ライフ)より、レベルEの被験対象が…



逃走した。」







"レベルE"の被験対象が逃走した?

冗談だろう?

会議に集まった者の間にざわめきが広がっていく。

レベルE…研究室内にいるのですら危険な状態。人体への影響も悪い意味で高い被験対象につけられるレベルだ…



まさか…………………




逃げたのは、あいつか?


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