現実 そして 混沌
芦屋たちはただちにPEPE東校本部へ一報を入れ、知り合いの葬儀屋を手配した。このまま放置しては、遺体が腐りかねない。
名影は先程から訝しげに眉をひそめて、何事かを思案している。
代わりに芦屋がことの全てを仕切った。芦屋は自分が、思いの外落ち着いていることに驚く。それほどまでに、芦屋にとってナギとは"よく分からない存在"だった。
実際、検死および葬儀の準備に際しても謎が多く浮上してきた。
まず、連絡すべき親族等が1人も存在しないこと。仕方なく検死と葬儀の許可は芦屋が特別代筆という形でサイン、許可することになった。
さらには今回の旨を、父親でありPEPE東校の校長でもある芦屋秀貴に連絡・報告したところ、返ってきた返答があまりに自然すぎたのだ。
まるで予期していたかのように、
「あぁそうか。葬儀などの手配は任せる。」
とあっさり切られたのだ。
なにが起こっているのか。
「で?葬儀のやり方はどうします?」
うちの曾祖父の葬儀なども依頼したことのある芦屋家つきの葬儀屋に今回は頼むことにした。
「どんなのがあります?」
正直参加することはあっても、葬儀自体をとりもったことが無い。
「まぁ宗教宗派なんてのがある人はそれに乗っ取るんですが、あとは…土葬、火葬この辺がよくあるやつで、お金のある方々ん中だと最近じゃあ冷凍保存なんてのもありますね。」
保存してどうする。宗派とかは分からないな…
「あとはまぁ火葬とセットで散骨される方とかも多いですね。あ、それと、これは滅多におりませんが…
食葬、なんてのもありますね。」
「食葬?」
「えぇ、まぁ簡単に言ってしまえば、遺体を食べてしまう葬儀のことですね。」
遺体を、食べる?
そんなの選ぶ奴なんているのだろうか。
「いや、普通に火葬でいい。」
本当は名影にも相談すべきなのだろうが、今の名影の憔悴具合を見るに相談するのは酷だろうと判断した。
「検死が終わり次第、すぐに葬儀を行いたい。準備は万端にしておいてくれ。宗派なんかも特にこだわらなくていい。ただ……一応クラスメイトなんだ、だから特に丁重に頼む。」
「かしこまりました。」
嫌なこととは立て続けに起こったりする。