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トラストルノ  作者: なさぎしょう
序章
3/296

特別な生徒 3


あの事件から、4年。

ティト・コルチコフは今年でSクラスを卒業する。順当に行けば、来年からはSOUPの組織員となるわけだ。

ティトは芦屋たち程、SOUPの組織員になることに抵抗がない。むしろそれを目指して8年前、Sクラスに入った。

家が裕福じゃない、代理戦争で片親を無くした、強姦されそうになったことがある…そんなことはトラストルノでは"大したことではない"。全て自己責任で、ルールなんてものは無く、落ちていきたくなければ自分でのし上がるしか無い。

だからティトはここトラストルノの裏方であり、おそらく暗黙のうちにできあがっていたカーストの上位にたつ組織に入ろうと思った。


でも入ってよかったな…。

素直に今はそう思える。


「ティト?講義終わったよー⁇大丈夫⁇」


現首席の名影零(なかげれい)が覗き込んでいる。ティトは笑って「寝不足でぼーっとしちゃったわ」と零にウィンクしてみせる。

この子も、色々と大変だろうな…と常々思う。それでもやっぱり、3年一緒に居て実感した。彼女はまさしくトップだ。それはもう、そのために産まれてきたかのように。完璧な首席だった。

4年前の彼よりも、遥かに。





またサボってやがる。

またクイズメモを回しているのだろう。シヨンが下手に(ふせ)から二つ折りの紙を受け取り、しばらく悩んでから物凄い勢いで何かを書き込むと、名影の前の席に座る真城に下手でヒラヒラと紙を渡そうとしている。気づかない真城にイライラしたのか睨みつけ、「真城さん‼︎」と小声で呼ぶ。シヨンはどうも真城が嫌いらしい…


Sクラスの教室は他のクラスとは別の棟にある。1つ1つの教室も少しずつ広め。階段状になっていて、後ろの席からでもちゃんと前が見える。なのに律儀に全員が前の方の、真ん中の方の席に座っている。

真面目なのではない。ただ暇を持て余してしまうために、みんなで暇を共有しようというわけだ。


2列目に芦屋、ディモンド、キング。3列目には伏、恩、ナギ。4列目にマチルダ、そして何故か微妙に隙間を空けて真城、コルチコフ。4列目の真城の真後ろに名影が1人で座っている。

そのため、名影の位置からは全員が一応見える。一昨年までは1番後ろの列で1人座っていたのだが、昨年からは真城に呼ばれて随分前までおりてきた。


「わっかんね…」


前の席で真城が頭を抱えている。


「潤、大丈夫かー?」


からかい半分で小声で聞くと、「大丈夫、いける」と繰り返しながら頭をかく。

本当は"首席推薦"とか、"首席"を強調するようなものは使いたくなかった。しかし、昨年の春前、真城と出会ってその考えを変えた。

首席になってしまったのなら、首席らしく。

前の首席のようにはなれなくとも。


講義が終わってそれぞれが次の教室に向かったり、サボる算段をつけたり、思い思いにしている中、スッと教室から消えた影を見逃さなかった。きっとまたナギだ。いつも気づいた時には居て、そしてまた気づいた時にはいない。長い前髪と常備のマスクで表情どころか、ちゃんと顔を見たこともない。正直少し不気味…だと思う。

それからナギの真後ろの席のティトが視界に入った。

珍しくぼーっと前を見つめている。


「ティトー?講義終わったよー、大丈夫⁇」


そう声を掛けると、ティトはハッとしてから「大丈夫よ。」とウィンクを返す。

そのあまりに自然なウィンクに、思わずドキッとしてしまう。ティトは20歳(はたち)だからSクラスではロバート・キングと並び最年長だ。今年で最後。

美人なみんなのお姉さん。スタイル抜群で、流れるような金髪をいつも1つにまとめている。ティトには、名影も信頼をおいている。


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