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トラストルノ  作者: なさぎしょう
合戦場
287/296

真を知る者


いくつもの死地を乗り越えてきた、という自負があったが、なるほど今回のは今までと勝手の違うタイプの死地だった。


戦争や抗争のように"集団"に向けられた敵意ではなく、明確に今ここにいる自分を含めた3人…と死体ひとつに向けられる敵意。




「次は左のはずだ‼︎」


青年----サイスの言葉でティトとリザがひらりと身を翻す。

左へ曲がりながらリザが投擲ナイフを今来た道へ投げると……


「ぐぇっ」


嫌な音を立てて、リザにそっくりな"顔"をしたなにかが後ろへ仰け反り、そのままロボットの脚に絡め取られすり潰されていく。


「こんな…こんなの冒涜だわ‼︎」


ティトは苛立ちと恐怖で竦む心を鼓舞するように叫ぶ。


「こんなのは命の冒涜よ‼︎倫理だのなんだの、そういったもののカケラもないわ‼︎」


ティトの怒声につられるように、サイスも力任せに叫ぶ。


「全くだ‼︎人間のすることってのは、本当に恐ろしいよ‼︎こんなことを思いつく、その神経が恐ろしい‼︎」


叫ぶと、視界がクリアになっていく。

…気がするだけかもしれないが、しかし心の中のパニックが少し落ち着き整理されたことは間違いない。


すると、2人に触発されたのか……はたまた同じようにのらなければ、と思ったのか、リザまで大声で叫び始めた。


「こんな犬畜生にも劣る、駄馬(だば)程も使えないもん、こさえやがって‼︎てめぇらの目で聖人の苦悶を見ろ‼︎てめぇらの耳で罪人の慟哭を聞け‼︎」




リザが大声を上げた、という事実……それからあんまりな言葉の羅列に2人は一瞬背後の恐怖も忘れてリザを振り返る。


肝心のリザは相変わらずの無表情で、ちっともそんな言葉を発しそうには思えない。


「……なんか、叫んだら…スッキリした…」


「え?…あ、あぁ…そりゃ良かった…」


2人は戸惑ったが、わずかにリザの目がきらりと光ったように見え、言葉をつぐんだ。

何か策があるのか、はたまた後ろの化け物をなんとか出来るのか……








ユキは耳元に響き渡った相棒の声に、思わず伏せていた瞼を見開く。

まるで、「ユキだけ寝てないで‼︎」とリザに注意されたような気分だ。


「…参ったな。よし、そろそろ俺も役立てる頃だろうし、助け舟を出してあげようかな?」


ユキは手元のエアスクリーンPCで3人の現在位置を割り出すと、まず自分が向かうべき出口を調べる。

どうやら、地図に記載の無い通路が四方にあるようで、ここから見ると3人は壁の中を走っていることになっている。

電波が悪いせいで、映像は全く見えていないが……音と、この位置情報だけを頼りに3人が出て来るであろう出口を割り出し…先回りする必要があるな。


「その上で……何か機械にハッキングを掛けられれば、こっちのもんなんだけど…」


ユキは腿の上に頭を乗せる少年----ティズを起こすと、自分の乗ってきた戦闘用の手動車(アンチカー)に一緒に乗り込み急発進させる。


「いやぁ…それにしても嫌なご時世だよね。あっちこっちにアンドロイドだ、クローンだって偽物が溢れかえってるんだもの。」


そういうと、ユキの荒い運転に戸惑い近くの座席にしがみついていたティズもコクコクと頷く。


「ところでティズ。君が今ここに居ることは大変な幸運と言わざるを得ないよ‼︎その君のしがみついている席に座って、しっかりとベルトを締めて‼︎それからその辺の機械、触ったことあるだろう?多少僕がいじってはいるけど操作は変わらない。それで今から言うものを探して、動かしてほしい。」


「う……。」


ティズは再び頷くと、えっちらおっちらどうにか座席に座り、機械に向き直る。


「リザ、準備万端だ。」


ユキの声に、リザの声が呼応する。


「わかった。こっちも、化け物、なんとかする算段、ついた。」



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