戦場組
とにもかくにもひとまず、もう1人を探さなくてはならない……
名影と真城はPEPEに戻ると、まっすぐに寮へ向かった。
正直、"探す"とか"考える"という選択肢はほぼ無きに等しく、軍属として戦地に赴けるようなバックグラウンドの人間はPEPE東校Sクラスに1人しかいなかった。
コンコンコン……
「はい?…あぁ首席と真城、急になんだ?」
「あの……実はとてつもなく無理なお願いをしに来たの……だけど、ロブじゃなきゃ頼めないことで…」
「俺にしか頼めないこと?……まぁいい、とりあえず話は中で聞くさ。入れよ。」
ロバート・キングはまるで旧時代の映画から飛び出して来たヒーローさながらの高身長に筋肉をまとった旧欧州系の青年だ。
故に、誰しもが彼を第一印象から"頼り甲斐がある"と感じる。
かくいう名影も決して例外でなく、Sクラスみんなの兄のような存在だと勝手に思っていた。背は芦屋の方が高いのに、ガタイの良さと落ち着きが、きっとその"頼れる雰囲気"につながっているのだろう………とはいえ。
「あのね……これからお願いすることは、本当に、とんでもない…お願いなの。」
真城の時とは違って、ロブは頼れるが名影との関係性がクラスメイト、というもの以外の何物でもない。
故に大変頼みにくい。
「どんなことかはわからんが、言うだけならタダだ。それとも…聞けば俺に断る権利が無くなる類のことか?」
「いえ……でも、ほとんどなきに等しくなる。」
「本当にその頼みが嫌なら、俺はあらゆる手を使ってでも断るから…言ってみてくれ。」
名影と真城は、その言葉に救われながら、ゆっくり口を開いた。
「……端的に、まずは結論から、言うと……
私と、潤と一緒に、カンパニーの戦争に、参加して欲しいの。」
ロブにとって首席は先代の芦屋も、今の名影も十二分に尊敬に値する存在だ。さらに言えば、彼らのまとう圧倒的な空気感……"余裕"と言い換えれば良いだろうか。
そういったものにも、少なからず畏怖の念を抱いていた。
クラスメイトとして、"近い"が、1人の人間として"遠い"存在。
その首席が、謎多きお供を連れて、自室へとやってきた。
しかも、なんとも自信なさげに「頼み事」をしにやってきたのだ。
「どんなことかはわからんが、言うだけならタダだ。それとも…聞けば俺に断る権利が無くなる類のことか?」
と聞けば、より顔を歪ませ悩ましげに言葉を濁らせる。
PEPEに入った時点でもとより、厄介ごとに巻き込まれる可能性は承知のうえだ。
さらに言えば、Sクラスにいる…という事実そのものが、まぁある意味では既に厄介なことみたいなもんだし……
でも首席には、どこか優しすぎるところがあるのも事実だからな…気を使っているのか?
「……端的に、まずは結論から、言うと……
私と、潤と一緒に、カンパニーの戦争に、参加して欲しいの。」
まぁ、とんでもないことを言われるとは思った。
が、
なんだ、大したことではなかった。