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トラストルノ  作者: なさぎしょう
痛快癖
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開闢を唱えて


人間はいつもそうだ。

内側に不満が溜まると、それを発散させるべくその不満を敵対心や差別心に変え、他人を貶めようとする。そうすることで自らの自尊心や加虐心を満たす。


時の為政者達の考えも変わらない。

自国、受け持ちの地区で問題が山積みになり民衆の不満をどうすることも出来なくなると、やれ「どこの他国が悪い」「反何某」「反なんたら」といった外部との比較によって民衆の充足感を得ようとする。




まぁつまり、他人は妬ましい、という考え方は万人に少なからずあって……そしてそれは大衆であればあるほど感染しやすく、利用しやすいということなわけだが。


SOUPが平然と「力を貸して欲しい」と命令(・・)してきた時は正気を疑った。

が、結局デカい組織を潰そうと思えば、相応に大きな別の組織とぶつけてしまうが良い。そのためには前述したような心理を上手く使うのが良いだろう。


となれば中に入ってしまう方がやりやすい。






四年前、自分の元になったやつ(・・・・・・・)を殺した。

変な気分だった。

自分に似ていれば似ているほどに、"殺す"という行為が有耶無耶になっていくようで……


体内に棲まう化け物の、巨大な鉤爪で内臓をゆっくりと、抉られているような……そんな心地。




「俺が死んだからって、お前が唯一無二(・・・・)になるわけじゃない。」




お互いに限界だった。

2人の芦屋類は互いに互いを消し去ろうとしていたし、その時の2人の間には狂気とも正気ともとれないような禍々しく晴れ渡った空気が滔々と流れていたのだ。


「バラバラにする必要は無かったじゃない‼︎」


恋人に言われた一言は全くもってその通り、正論中の正論。むしろ殺人そのもの(・・・・・・)を責められなかっただけ、彼女の優しさだったんだろう。

彼女の立場を考えれば……生徒を守らなければいけない。その役割に背かせてしまった。






でもどうせ、もうじきみんな死ぬしな。



絶対ない。

自分だけは助かる。

自分は特別だ。



そんなことないんだって……きっと嫌でももうじき気がつく。

思えば自分がPEPEで関わった人々の中には、その事に気がついている人も少なからずいた。


優秀だから、諦めていた。


"亜細亜座"とかいうところで出会った、同じクローンの女からも諦めと死の匂いがした。

もしかしたら"悟り"とかいうやつは諦めと死の匂いがするもんなんじゃないだろうか……?


なんて馬鹿なことも考えて……






「レベルEの捕獲だ。」




そう言われた。

聞くつもりはない。

どうして聞くと思ったのか。

レベルEの逃走は、あいつらにとって"ハプニング"だったかもしれない。

でも、俺にとっては……俺ら(・・)にとっては"サプライズ"、もしくは一世一代の"チャンス"に他ならない。



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