実に厄介な
「で、類を殺して逃げてるやつがレベルEに抗体がある。しかもいまその話が出るってことは……」
「あ……あぁ、SOUPが秘密裏に保護したと聞いている。」
秀貴は息子の態度に驚いた。
もっと父親を責めるとか、パニックになるとかすると思っていたのだが……
「保護ねぇ……」
聖は一度目をそらしたあと、しっかりと秀貴に向きなおる。
「俺は、クローン実験が進んでいることを……ナギと名影の件で知った時、もしかして四年前に死んでたのはクローンだったんじゃないか……って考えた。」
聖にとっての願望の妄想だ。
「でも結局、死んでたのはオリジナルの……つまり実兄である類本人だった…と。」
聖は妙に悔しく思いながら先を続ける。
「俺は、怒ってるし、ぶん殴ってやりたいと思ってる。」
秀貴は「やっぱり…」と自分の自業自得ぶりに自分で落胆する。そりゃあそうだ……こんな父親、最低だ。
「SOUPと、PEPEの幹部連中と、それから自分に対してだ。」
「……え?」
「言っとくけど、あんたや、クローンや、あと紅凛さんのことは怒ってないから。そりゃ……もっと違った選択を……と思わなくはないけど……」
そう言うと、聖の視線はまた床へ床へと落ちていく。
「厳しくなったり、優しくなったり……変だな、とは思ったんだよ。でも……無視されるのが辛かったから、優しい類に戻ってくれたんだって思ったんだ……なんでもっとちゃんと気にかけられなかったかな……」
しばし、親子の間には沈黙が漂う。
お互いに思うところはある。
でも互いを責めるような気持ちは一切湧き上がってこなかった。
「で……だな…」
秀貴は話を進めなければならないという責任に唐突に突き動かされ話を始める。
聖もとりあえずは兄に想いを馳せるのをやめ、父に改めて向きなおる。
「いまSOUPをはじめとして、いくつかの組織がそういった……つまりクローンやその他様々な手を尽くして"レベルE"を捕らえようとしている。」
「そんで利用しようとしている?」
「あぁ恐らくな。」
そりゃ、そんな超絶武器なら手に入れたくもなるだろう。
「それから…その件と関係があるのかわからんが……カンパニーの子息やPEPEの生徒が襲われたりする事件が立て続いている。南地区のPEPEではこの間、校内で小規模な爆発があったらしい……」
「テロ……?」
「そうだ。」
「え、なんで今?しかもPEPEに?」
SOUPにってんならまだ納得が行くが…
「まだ何もわかっていない。ただ……実は嫌な目撃情報が入っていてな。
だから今回お前に類のことも全て話しているんだが……」
ここで類?
「実は、爆発があったところのカメラにいかにもな連中が写っていたんだが……その中の何名かに見覚えがあったそうで、南地区では反他地域のデモなんかが爆発的に波及していっているらしくてな。」
いかにもな連中?
反他地域?
「その写ってたのって?」
「いずれも過去どこかのPEPEに所属していた者。そしてそれを率いていたのが………」
聖の頭にぱっと答えが浮かぶ。
「……兄貴のクローンか。」