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闇夜に紛れて
「間に合ったな、鍵は手に入ったか?」
「いや…鍵は無かった。そもそもよく考えてみれば、鍵があるなら発信機能なんかでもつけて追えばいい。」
「連中はお前という脱走者を出しておきながら何も対策をしてなかったってことか…」
呆れたもんだ。
「その代わり、研究材料は取ってきたわ。これで私と比較研究も出来るでしょう。」
少女は血液の入った注射器を見せる。遺体を寝かせた時に少しだけ採ってきたものだった。
「よし、とりあえずは撤退だ。」
男が先頭になって10通路を小走りに進んでいく。その後を白髪の男、少女と続く。通路は外に通じているが、扉の部分がオートロックのようになっていて外からは入れないし、1度出て扉が閉まるともう開かない。
「思い残すことはないかい?」
白髪の男が振り向き少女に聞く。
「まさか。ないわよ。」
少女は肩をすくめる。
「戻るぞ。」
扉の外は真っ暗な闇。
彼らの姿は溶けてなくなる。
一瞬のきらめきは美しい白髪か、それとも少女の……




