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トラストルノ  作者: なさぎしょう
愛憎劇
231/296

干渉


サイスの姿が見えなくなると、右手中指の先に手が添えられたのがわかる。この手はサラサラとしているから、先程の大男たちではない。間違いなくサイス本人の手である。


「まったく……カンパニーのトップに喧嘩を売ろうなんて、今時珍しい愚か者がいたもんだと思って待っていれば……現れたのはこんなにも美しい青年だ、というのだから驚きだ。」


サイスは話しながら添えた手をススーッと手の甲、手首に腕、そして肩まで滑らせる。

ゆっくりと肩から首元にまで手先が触れる。




「僕は君の顔に傷をつけない。視力も聴力も、奪いはしない。安心してくれ、手足も…多少は傷つけてしまうが、綺麗な状態に戻してあげよう。」


「なんですって⁉︎」


サイスの言葉に、突然グプタの正妻が声をあげた。


「そいつを傷つけない(・・・・・)?」


「えぇ、身体的崩壊はこの手の奴にはあまり効果がない。むしろ痛みでもって自分の正常思考(トゥルーシンク)を保とうとする。ですので精神的瓦解を先に目指しましょう。」




本人を前にしてとんでもないことを言ってくれる。



残念ながら、サイスは本気だろう。






「さて、まずは質問をさせてもらおうかな。ここで君が答えてくれれば、この作業はそこで終わり。まぁ、僕は仕事なくして帰宅と相成るわけだが…」


サイスの爪がわずかにジャックの首に食い込む。


「まず、そもそも、君はグプタ襲撃およびその御子息が行方不明である件に関わっているかな?」


ジャックはサイスに答える気にはなれない。


こいつは嫌味と言い掛かりの天才だ。下手に答えたらどう取られるか分かったもんじゃない。


「1つ、忠告だ。僕は旧時代の裁判というものや、その際の人間の心理状態というものに非常に興味があり、同時に共感もしている……つまりだね、"沈黙"は"同意もしくは賛同、肯定"と同意と捉える。いいね?」


いいわけあるか。ふざけるな。


「無論、沈黙が全てを証明するわけではない。が、あくまでこの場の裁き手(・・・)である僕の、心象としては、肯定と捉える。つまり君に対する判断の全ても、"沈黙は肯定"と捉えられることに…なるな。」


サイスの余裕の表情が目に浮かぶようだ。

分厚い目隠しの布越しにも、サイスの顔が見えてしまいそうな程…ジャックはその腹立たしい顔を思い浮かべ、一発かましてやりたい心持ちでいた。




「さて、ではもう一度質問しよう。



君は今回の件に、関わっているかい?」








時間の無駄だ。帰りたい…。

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