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トラストルノ  作者: なさぎしょう
序章
22/296

侵入者 SideS


「これより標的(ターゲット)のいると思われる棟への侵入を開始する。」


『了解』


『りょーかい』


他のクラスの寮よりも幾分か大きく、しかし古さも感じる荘厳な建物がSクラスの寮らしい。

随分と豪勢な所に標的(ターゲット)はいたものだ。

今回の標的(ターゲット)人造人間(アンディー)ではない。それどころか、私に非常に関係のある偽物(クローン)だ。

簡単ではないだろう。

しかし、なんとしてもSOUP(ダイヤ)より早く私達(スペード)が始末してしまわなくてはならない。狂った実験を終わらせるのと同時に、連中の思惑を表沙汰にしてやるのだ。

稚拙な考えかもしれない…。

それでも、何かせずにいられない。

復讐なんてかっこつけたものなんかじゃない。

ただ、私自身の満足のためだけに…



建物の外から回り込み、1つの部屋の窓下で屈み込む。

この建物はロの字型で、真ん中に中庭がある。さらに、そちら側に廊下があり、外側の窓からだと廊下に出ることができず、どこかの部屋などに入るしかないのだ。さらに、厳重なセキュリティ。

厄介だ。

窓枠に細い針金状の物体を滑り込ませると、その細長いものは窓枠に沿って蛇のように這っていく。そして一周しきると、少女がそれをクルクルと巻き取り、しまいこむ。

そのまま今度は窓枠の左端と右端を慎重に押さえ、奥にグッと押し込む…と窓枠ごと窓が外れた。

少女は音を一切たてずに中に入り込むと、窓枠をまたパコッと器用に嵌め込む。この間、音はほとんどなく気配すらも夜闇に紛れてしまっていた。


「これより標的(ターゲット)捕獲および抹消に向かう。」


『了解、これより一旦通信を切る。ジェスター、お前がその建物の外に出ると同時に、また電波を拾って通信出来るようになるはずだ。健闘を祈る。』


君の御武運(グッドラック)をお祈りするよ(ジェスター)。』


その声を最後に通信がプツリと途切れた。これで完全に1人、しっかり集中できる。

彼女が入り込んだ部屋は電気系統の部屋らしく、コンセントやらケーブルやらがごちゃごちゃと広がっている。その間をぬいながら、音をたてずに進む。埃がたまっているために足跡を残さずに進むのは至難の技だ。



廊下に出ると、階段を見つけ登っていく。どうやら主電源はもう落とされているらしく、エレベーターは稼働していない。

となると厄介なのが、万が一起きて行動する人間がいた場合、確実に階段を使ってきてしまい、鉢合わせる可能性が高いことだが…

それへの対策もちゃんと考えてきた。

実はこのPEPEに仲間を2人、送り込んでいる。ただしその2人はこちらの詳しい計画などまでは知らない。ただ、私達の掲げる主義主張に共鳴し、手を貸してくれているだけだ。

そしてその2人にSクラス内部の人間関係を聞いた上で、盗聴、盗撮のスキルを仕込み調べた。


もし鉢合わせたなら、ある人物(・・・・)になりきるのだ。

私なら、いや私だからこそ出来る。秘技、とでも言おうか。



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