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トラストルノ  作者: なさぎしょう
花札遊
190/296

自然災害X


戦場も、娯楽街も、屋台通りも…

揺さぶられ、掻き混ぜられ、押し潰され、流され、そして焼かれて…「地獄のような」と形容するより他にない。




「誰か‼︎誰か、火を止めて‼︎私の店が燃えてしまう‼︎お願い誰か‼︎」


「この下に友人がいるんだ…なぁ、手伝って…手伝ってくれ‼︎」


「あの…‼︎あの、私の子供見ませんでしたか?はぐれてしまって…5歳位の子供なんです…どなたか…」


「おい‼︎そっちに行くな‼︎波がスゲェ勢いで寄せてきてる‼︎」


「避難するぞ」


「待って、写真…あの写真だけは見つけなくちゃ…」


「もうそこまで迫ってる‼︎写真は諦めろ‼︎」


「どっちに逃げたらいいの⁉︎ねぇ‼︎」




「おい、三番隊、四番隊、全員いるか?いるな?」


「ドローンの下敷きになっている者がいます‼︎」


「放っておけ‼︎」







みんながみんな、てんでバラバラに動く。

トラストルノには管理するような組織は無い。火を消すための組織も、皆を誘導する組織も、震災に便乗する犯罪を阻止する組織も…


日頃の仲はどうであれ、みんながみんな死に物狂いだ。泣き叫ぶ子供、発狂している女、立ち尽くす老人…

差し伸べられる手はない。


立ちのぼった火は龍の尾のように、近くにあるものを強かに打ち、そして龍の頭でもって容易く呑み込んでいく。




SOUP(スープ)は人々のためには動かない。

SOUP自体が多大な被害を被ったこともあるが、なによりSOUPは人助けの組織ではない。利益のないことに動かない。

個々人が「助ける」も「助けない」も決められる。

個々人が「逃げる」も「逃げない」も決められる。




死屍累々


しかしこれも、落ち着けば片付け(・・・)られていく。

囚われた少年、何人もの子供の命を預かる男、その子供達を率いる子供、その子供の友人達、母を思う青年、息子を想う母親、現実問題から遠ざかる者達、尚も仕事に励む男女、今こそ人々に笑顔を届けようとする者達、それを率いながらも瓦解していく女、冷静な判断でその場を切り抜ける2人の男、そして数多の人々から逃げる脅威とその仲間達……




誰にも平等に、あまりに残酷に、襲ってきたもの。


しかし彼等は生き延びた。強運を持って。


そしてなんて事のないように、またそれぞれの役目に従事し、生きる。埋もれたあらゆるモノには見向きもせず。










「だって、ここはトラストルノよ?

みんな自由、みんな平等。

他人様のために、まして生きてもいないような人のために振り返る義務はないわ。

倫理観?笑えるわね。

だって戦争してるのよ?明日は我が身なのよ?


正義感で食べていけるなら楽なのにね。」


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