自然災害8
「シン‼︎あいつらまだついてきやがる‼︎」
「ちっ…しつけぇな…」
よりにもよって、何人もの子供達の安全な場所への移動を女王が頼んだのは、ケイトとシンクだった。
2人とも子供が嫌いなわけではない…が正直扱いには不慣れな感じが否めない。
挙句に、先日他の武装集団との小競り合いの際に取り逃がした奴らが襲ってきた。
早くも、車2台はケイトがライフルでタイヤを狙い撃ちにし、撃退していたが、まだあと3台。
しかも、子供達がいるためにあまり激しくドンパチやるわけにもいかない。
「ニコ‼︎頭下げろ‼︎」
シンクが車通りの少ないトンネルに車を滑りこませ、加速する。そしてトンネルを出る寸前…
「やれ‼︎」
シンクの合図で、ケイトが小型の閃光弾を窓から捨てる。
閃光弾が破裂すると、連立していた車達が玉突きの要領で止まっていく。
「やったか?」
「たぶん…うん、大丈夫そうだ。」
2人は胸をなでおろした。
ドドドドドドドドッ…
「うん?」
ガタガタガタッ‼︎
「地震か⁉︎」
車が転倒するかと思うほど振られる。ケイトは子供達がパニックにならないようにと、すばやく全員を近くに寄せて優しく抱きしめ一人一人の背中をさする。
「あぁ…おいやべぇぞ。」
「え、なに?」
シンクにつられてケイトが後ろを見ると…
ドシャッ…
「トンネルが……」
崩れ、道はふさがっている。
いや、道がふさがっていることは大した問題ではない。道などいくらでもある。
ただ、閃光弾で立ち往生していた連中は…トンネルの瓦礫の中、もしくは下だ。
「揺れが収まったな、いくぞ。連中はそういう運命だった。俺らは自分の身を守っただけだ。」
「うん…」
トラストルノに生きていくうえで、赤の他人の死などは些細なこととして捨て置く方が良いのだ。
それはやむを得ないことだ。
シンク達の車は先を急ぐ。
ケイトは最後に一度だけ、遠ざかるトンネルだったもの…積み立てられた墓石の山をちらりと見て、もう振り返らなかった。