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トラストルノ  作者: なさぎしょう
花札遊
185/296

自然災害5


「正常な思考の下での判断じゃなかったんだ。」


エイトはブツブツと言い聞かせる。

カルマの「戦線離脱しないか」という提案に、乗ってしまった。しかもそれを提案された時、自分の中には明らかにホッとしている自分が居た。

否、そもそもこのまま戦況に巻き込まれまい、ともう全身全霊で願っていたのだ。


「きっかけを、彼はくれただけ…」


「なにをブツブツ言ってるの?」


カルマは手慣れた様子で北側の境界管理をしているサーバーにハッキングをかけ、3人で北地区(ノースヤード)に逃げられるように準備を進める。


「本当に…これで良いのかって思って…」


「いまさら?」


ビットは弟達を残していけない。と来なかった。


「いや…うんまぁ。だってこれ、相当ヤバいことやってるだろ?」


「あぁ。でもって上手くやれれば僕らは自由だ‼︎まさしく"個人の自由"を獲得できるんだぜ?」


まぁ確かに、どうせ戻ろうが逃げようが今のトラストルノに危険じゃ(やばく)ないところなんて無いが…


「まぁ冗談じみたことはさておき、入って仕舞えばもう戻れない。

どうする?行く?」


エイトはセブン(ナナ)を見る。

ナナもエイトを見返した。


「…うん、行くよ。」


「っしゃ、じゃあそこの扉から入ってほんの少しであちら側に抜けられる。」






カルマ達3人は扉に入り、通路を慎重に進む。

ひんやりとした空気が漂い、なんとなく不気味だ。ナナはエイトにぴったりとくっついて歩いている。

北地区(ノースヤード)は決して戦争に強い訳ではない。が、あらゆる最新鋭の機器による鉄壁の守りと、そして傭兵、工作員(スパイ)の育成によって他三地区と対等の関係であり続けている。


つまり今回のハッキングは相当危ない、ということになるわけだが…


「大丈夫、大丈夫。北地区(ノースヤード)は昔から"来る者拒まず、去る者抹消"のスタンスだからね。つまり、ハッキングができる程度の、ある程度の知識や力量を持った人間なら内側に招き入れ、仲間としよう‼︎ってなわけだね。」


「え、じゃあ通路出た途端捕まるんじゃ…」


「かもね。でもまぁ交渉には応じてくれると思うよ。」


他の2人は、カルマのあまりに楽観的な展望に不安をより募らせつつも進んでいく。






ドドドトト…ドドドド…


「うん?なんだこの音。」


「え、まさか北で戦争が起こってるとかじゃないよね?」


「いやそれは無いはずだよ。」


3人は辿り着いた扉の前で奇妙な地鳴りだけ(・・)を聞いた。


「開けるよ…‼︎」


カルマが扉を開くと……








「?何にも無いな。別に普通の…草原?だな。」


エイトがゆっくり周りを見回しつつ呟く。特に人の姿も見当たらない。


「当たりだったんだ‼︎たまーにある人の管理の無くなってる通路の一つだったんだよ‼︎とは言っても、通路内のセンサーで僕らの顔やら服装なんかは解析されてるだろうけどね。でも何がともあれ、僕らは危険人物の類とは見られなかったわけだ。」


それからカルマが小型の音電子(ラジオ)を取り出し振りだす。

するとやがて、どこかの誰かが流す幾千もの局のうちの一つを拾った。


「ラッキーだ‼︎北のか、東のか分かんないけど、どっかの電波も拾えた‼︎」




3人は兎にも角にも、だだっ広い草原をおそるおそる------といっても身を隠す場の一つも無いのだが------横切り現れた掘建小屋の影に身を潜め、顔を寄せ合って音電子から流れてくる音を聞いた。




『大変です‼︎大変なことが起こりました‼︎地震です‼︎大地震です‼︎トラストルノの、少なくとも東、南、そして西の大半を巻き込む巨大地震が連鎖的に起こっているようです。皆さん‼︎お命の確保を‼︎』




そこで音はブツッと切れてしまった。

最後の発言もなんだか意味がわからないが、切羽詰まっている状況だけは分かった…


「これ…本当…かな?」


ナナの揺れる声に、2人も返すことが出来ない。今しがた通ってきた通路の、向こう側で、何が起こったのか。


「そういえば、さっきのあの音…‼︎」


「あれ、もしかしたら地鳴りだったのかもね…。」


カルマ達はしばし、どうすればいいのか分からなくなってしまった。正直、向こう側の友人や仲間が心配でもある。

といって入ってきてしまった以上、そんな簡単には出られない。




「おい、なにやってる?」


……‼︎

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