表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラストルノ  作者: なさぎしょう
花札遊
182/296

自然災害2


名影は「妄想だ」という芦屋校長の言葉を受け止め、それが真実か否かはさておき、それが校長の答えであるなら…と受けとめいさぎよく引き下がることにした。


「…わかりました。引き続き生徒名簿の纏め作業および伏舞人(ふせまいと)、カルマ両生徒の奪還に動きます。」


「あぁ…ところで、零くん個人には彼等(カンパニー)は何も求めてこなかったのかい?」


名影は部屋を出ようとしていた足を校長の方へ戻し、首を傾げた。


「私個人…とはどういう意味でしょう?」


芦屋校長はじっと名影の目を見る。

そして少し間が経つと、首を振った。


「いや、なんでもないよ。そちらは君に任せる、とそう言った以上これ以上の詮索は無粋だろうしね。しかし…」


芦屋校長の目がまた名影を捉える。


「しかし、よく気をつけるんだよ。くれぐれも無茶はしないように。何かあれば、微力ながら私も手を貸そう。」


そう言った芦屋校長の表情は、名影の目にはとても優しく温かいものに映った。

父親の目だ。

名影は咄嗟にそう思うと、なんだかこのやり取りすら茶番のように思えてきて、ふふっと笑いながら頭を下げ、部屋を出た。


「失礼しました。」






なかなか…良い子達ばかりだな。


芦屋校長は名影の出て行った方をぼんやりと見て、そんなことを思った。

さすがは首席、勘が鋭いなんてもんじゃない。きっと彼女はそれなりの証拠も掴んでいるんだろう。

でなければ、憶測だけで人を問い詰めるようなことはしない筈だ。


「どっからかけ違ったかな…」


一座を立ち上げた日か、不穏な空気に逆らった日か、一座を去らざるを得なかった日か、それとも彼女(・・)を見つけてしまった日か……


いや、どちらにしたって、俺はこうなる運命だったんだろう。俺はいい。ただ…妻子には申し訳がない。


「はぁ………」


芦屋秀貴(あしやしゅうき)として出来ることはやって来た、と言い切れるだろうか。

いや、息子をすでに1人守りきれていないではないか。

病床に伏せる妻に何かしてやれたか?

せめてもう1人の息子には激励の言葉でも掛けてやれば良いのに、それも出来ずにいる。

つくづく、自分が、嫌になるな。




ドドドドドドドッ……


「…?地震…か?」


あぁ、本当に嫌になる。


ドンッ‼︎ガタガタガタッ…


瞬間、芦屋は立っていられず、机に掴まる。

重厚な木の机すら不安定な揺れ方をしている。震源が近いのか、尋常ではない揺れだ。


地震自体トラストルノでは珍しいことだ。

それもこんなに大きなものはそう無い。


「最悪のタイミングだな…」


芦屋は、極めて冷静に状況把握に動き出した。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ