自然災害
金切声と焼けるような音の連続…
否、オーケストラの荘厳な調べに包まれて、伏はいささか心地良さが意識に勝りだした。とんでもなく…眠い。
寝ちゃダメだ。いくらなんでも寝るな‼︎
自分に言い聞かせるが、どうにも舟を漕ぎそうになる。なんとかどうにか意識を保つ為に、一旦意識を正常に引き戻す。
なるほど、良い音ではないな。
それでも然程気にはならないけれど。
それからもう一度、意識を突き落とそうとした。
ドトドドドッ…
それは突然やって来た。
「うぉっ⁉︎」
突如響いた以上な地鳴りと、椅子をひっくり返すほどの揺れ。さすがの伏も驚きで意識が正常に逆戻りする。
「おい‼︎揺れが収まり次第、クイーンに連絡しろ‼︎人質の無事を確認、我々も至急、ニ一○へ向かう‼︎」
外が慌ただしくなり、それから異端者が飛び込んできた。
それからテキパキと腕と脚の拘束を椅子から外し付け替えると、ふと伏の顔を見た。
「妙に…冷静だな。」
「?あぁ、うん。なんだろうね本能が訴えかけてくるんだよ、冷静であれってね。」
「…そう。」
伏は自分でも可笑しくなるくらい冷静な頭で、現状を分析していく。
"人質は無事"という言葉から、まず真っ先に殺されることはないな。
今さっき起こった地震で、この建物は壊れてないが、もう一回来たらやばそうだな。
被害状況なんかも知りたいな。
伏の頭の中は、はじめて経験した地震に対して、非常に冷静であった。
いくら待っても変化がない…どころか舟を漕ぎはじめた人質を見るのは初めての事であった。
「化物か……」
これ以上続けるのは時間の無駄だ。
デュースは溜息を一つつくと、部下に手を挙げて実験の中止を促した。
それは突然やって来た。
ドトドドドッ…
「なんだ?」
ドンッ‼︎
「うわぁっ‼︎」
「なんだ‼︎」
地鳴りの後に、突然いままで経験したことのないような揺れが襲ってきた。
爆弾が落ちた時の衝撃なんて比にならない。もっと大きな、建物ごと揺すぶられ、掻き混ぜられるような衝撃だ。
「落ち着け‼︎一旦動くな‼︎」
それから人質をモニターで確認する。椅子はひっくり返っているが、無事なようだ。
「おい‼︎揺れが収まり次第、クイーンに連絡しろ‼︎人質の無事を確認、我々も至急、ニ一○へ向かう‼︎」
指示を出し、一旦揺れが収まると、人質の部屋へ。
拘束具の付け替えをしていると、何かが引っかかった。
「妙に…冷静だな。」
「?あぁ、うん。なんだろうね本能が訴えかけてくるんだよ、冷静であれってね。」
「…そう。」
なぜこんなに冷静なんだ?むしろ本能的に逃げようとしたり、パニックになったりしないか?
やはりこの少年は………危険なのでは?
デュースの頭の中は、突然の地震によって混乱し、理由のない焦りが生まれていた。