表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラストルノ  作者: なさぎしょう
盤上駒
179/296

・・・・・


「エイト、セブン、キングと連絡が取れません。」


「そうね。」


「ジャックは一向に帰ってこない‼︎」


「えぇ、そうね。」




この問答はもう何度目だろう。

テンは机に向かいあちこちへ連絡したり、何か書類を仕上げる女王(クイーン)の姿をもどかしげに見ることしか出来ない。


「何をそんなにカリカリしてるんだ。」


テンがイライラしているのは、何も女王の態度だけではない。この男------サイスの妙に嬉々とした態度が余計に腹立たしいのだ。

ジャックの不在…しかも先程小耳に入れた話が確かなら、"戦場に送られ死ぬかもしれない"事態が、サイスにとってはこの上なく楽しいのだろう。


「貴様は黙っていろ。」


テンはもはや歳がどうとか、立場がどうとか、そんなことは気にしていられない。

せめて、せめて自分をジャックの元に行かせてほしい…(サウス)の連中が何かしてはいないか、拷問の類は受けていないか、自分の知らないところで親友(ジャック)が死にはしないか。


要するに心配なのだ。




女王様(クイーン)、貴女が許してくださるのなら、私はジャックの元へ向かいます。当然、トランプにとって不利になるようなことは何一つ致しません。」


「何を言う‼︎この人手の足りない時に。」


サイスの偉そうな喚き声にも動じず、テンはなおも食い下がる。


女王(クイーン)、どうかご慈悲を…‼︎」


女王(クイーン)はチラとテンを見ると、また手元の書類に視線を戻した。






「……勝手になさい。」


「………‼︎」


その言葉に、サイスもテンも驚きを隠せない。


「っわかりました‼︎」




テンは、本当は女王(クイーン)親友(ジャック)を呼び戻して欲しかった。そして欲を言えば、仲直りをして親子仲睦まじく過ごして欲しいとすら思っていた…

が、現実はそう甘くはなかった。


何がともあれ、とりあえずはジャックの元に向かおう。






「温情ですか?」


「テンは実によく頑張ってくれているからね。」


「テンじゃなくてジャックにでしょう。いまさら母親ぶるおつもりで?あいつは大体が……」


「出て行って。これを終わらせてしまうから。」


クイーンの表情からは、何も読み取れなかった。




サイスは舌打ち混じりに部屋を出て行く。


ジャックの死を、心の底から望みながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ