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トラストルノ  作者: なさぎしょう
盤上駒
176/296

迷宮攻略


エノラはまるで何度も来たことがあるかのように、スイスイと人の波を抜け進んでいく。一瞬も立ち止まらない。

途中、改札の中に入り、何もせずに出たりする。複雑怪奇な駅もあったもんだ。




「そもそも、この子がこんな人混みの中歩いてるとか奇跡じゃね?」


シロがふと思った、とアズに耳打ちすると、「いいから付いていけ‼︎」と睨まれ、顎で急かされた。

エノラを包み、保護する超薄型のシートのおかげで、服から手に掴み変えたエノラの手のひらはしごく普通の、柔らかくふわりとした子供の手の感触がする。

少しヒンヤリとするのは、エノラの体温が低いからだろうか。






「おぉ、全然違う風景になってきた。」


「歌舞伎町方面………?」


先程いた場所よりも、トラストルノの駅に近い雰囲気の場所に出た。地上への出口も二、三箇所しかないし、駅に直接繋がる、所謂"駅ビル"とやらへの出入り口も見える範囲には二つしかない。


「ここ。ここ‼︎」


エノラはいくつかあるうちの一つの出口を指差す。

確かにそこは出口だが…そんなに広くもないし、普通待ち合わせにはもっとでかくて、わかりやすい出口を指名しないか?


と思いつつも、アズはエノラに向き直り、視線が同じになるように少し屈む。


「エノラ、ありがとう。本当に助かったわ。」


するとエノラはぱあっと表情を明るくし、ニコッと笑う。そして得意げにすると、嬉しそうに、しかしおそるおそる、アズの手を握る。


そしてまた「んふふ」と恥ずかしそうに笑った。

アズもつられて笑うと、手を握り返し、帽子の上からエノラの頭を撫でた。

シロはそれを微笑ましく見つめる。








出口から地上に出ると、ネオンと汚れで明暗を示すビル郡が見える。

大きな液晶には髪を振り乱して歌をうたう、髪の長い人。男か女かはわからない。

銀行には人が忙しなく出入りしている。

靴屋の大きな黄色の看板は一際目を引く。


「すげぇな……」


独特の雰囲気にはエノラだけでなく、シロとアズも圧倒された。




「すごいだろう。ここがトラストルノでは"死んだ都市"と呼ばれている。」


声がして3人は振り返る。

そこには今回の協力者……しかし、思ったより…幼い、な。












「僕の名前はキング。ようこそ、東京へ。」



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