表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラストルノ  作者: なさぎしょう
盤上駒
170/296

異常者と異端者 5


「わかりません。僕には理解できない。」


「それで結構ですよ。時に…質問を続ける前に一つ、身体の不調などはありませんか?」


伏は唐突な質問に戸惑いつつ「…?特には」と答えた。




「そうですか、では質問を続けます。」


カチッ


伏はデュースの一挙手一投足に意識をぐっと集中させた。


「二つ目の質問は…そうそう、あなたが所属しているPEPE東校(イーストヤード)Sクラスについて、お聞きしたいんでした。」


これは…適当に嘘でもつくか。

伏は自分の記憶の書き換えを行う。イかれた頭ならではの特技。

普段の記憶の中で、みんなが使っている武器などを入れ替えていく。この時、伏本人はそちらを本当の記憶だと、本気で(・・・)思っている。そこが常人との違いだ。

こうなると薬の類も意味を成さない。

これは真城でも出来ない芸当である。


「まずは首席の名影零(なかげれい)さん。彼女に関しては日本刀を使っていたとの報告が既にあります。彼女の最も得意としているのは刀による接近戦ですか?」


カチッ


なーちゃんの得意な戦闘?それは…


「首席の得意とする戦闘は投擲ナイフや狙撃による援護です。指揮をとらないといけないのに、前線に飛び出すなんてありえないでしょう?日本刀を得意としているのはシヨンです。」


そう、いつもシヨンの刀捌きには圧倒させられる。


「…なるほど。では次席の、芦屋聖(あしやせい)くんはどうでしょう?」


「聖くんはオールラウンダーです。その場にあるものを何でもうまく使います。でもなーちゃんのような遠距離からの支援は苦手…らしいです。」


デュースは伏の目をじっと覗き込む。嘘を言っている風ではない。ということは、ジャック達からの情報が嘘だった、ということになる。

しかし、こんなに食い違うものか?


伏舞人(ふせまいと)くん、あなた自身の得意とするのはどういった戦闘です?」


すると伏は素でキョトンとして答える。


「僕は専らワイヤーを使った中距離戦闘派ですよ?」


「…そう、ですよね。」






別段、嘘を言っている風ではない。しかもSクラス全員を聞き終わった段階で、半分は情報が合っている。

ナイン……もといアレイ・ディモンドに関する情報も齟齬はなく、そしてその齟齬の無い解答と、齟齬のあった解答の間に、彼自身の変化は全く無かった。

ただやはり、彼があまりにもペラペラと答えてくれすぎる。という点が不自然なのだ。


命が惜しいから?痛い目には遭いたくないから?

それとも、さして彼にとってクラスメイトは大切でない?


とは言っても、三つ目の要求は易々と通してはもらえないのだろうな。


その前に少し確認しておくか…




「失礼。少しだけ席を外しますよ。」


デュースは伏を部屋に残して、廊下に出た。そしてそのまま二つ隣の部屋(・・・・・・)へ。

そこには大量の測定器が置かれていた。


「測定結果はどう?」


「緊張を示す数値は上下が見られますが、特に質問や要求に対する動揺などではないようですね…」


中にいた3名はいずれも20代半ば、見ようによってはデュースより年上に見えるが、全員がデュースの指示にテキパキと従い、そして敬語で返す。

それは畏怖や上下関係というよりも、もっと自然な関係のうえにあるような気がする。


「ここが上がっているのは?」


「ちょうどデュースの解答を聞き終えた直後ですね。」


「そう…違和感のある箇所もなし?」


「えぇ、特には…強いてあげるなら、カウントに対してなんら反応がない(・・・・・)ことですかね。」


「反応がない…。となると意識をシャットアウトしている可能性があるが、しかし質問にはきちんと答えている。」


「そうなんですよ。ですから、こういった音の圧迫に慣れているのかとも考えられますが。」


「あと少しだけこのまま1人にして、カウントはかけ続けてみよう。」




音の圧迫は人によっては短時間で発狂するような、拷問の一種だぞ?


なぜ無反応なんだ…。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ