異常者と異端者 2
「立って話すのもなんだな…ちょっと待っていてもらえます?」
「どうぞ。」
奇妙な人物------デュースは一脚椅子を持ってくると、伏の目の前に置き、ゆったりと腰掛ける。
この目の前の人物は何か一つの行動をする度に印象が変わる。推測年齢もコロコロと変わっていく。
「さて、それでは取引の話といきますか。」
伏はその言葉に眉をひそめる。
「ビジネスだって?僕の側は貴方に何も要求してないんですけど。」
そう言って睨みつけると、デュースは口を開けて天井を仰がんばかりに笑い始めた。
その様はとても幼く、彼自身すごく若く見える。まさしく少年のそれだ。
「はぁー…失礼。貴方は確かにまだ要求していませんが、しかし要求するべきですし、きっと私が言わずともするでしょう。」
ひとしきり笑うと、デュースは恐ろしい程スッと真顔に戻った。
「貴方は、我々に、もしくは私個人にでもいい、貴方自身の命を要求するのです。正確には貴方自身の命の自由、死の自由を要求することとなるのです。」
…なるほど。
伏はデュースをなおも鋭く睨みつけながら、内心納得し、そしてほくそ笑んでいた。
仲間の情報を売るか、自分の命を売るかだって?
そんなもの天秤にかけるまでもない。
仲間を売って生き残るだなんて、僕の美学に反する。他人からはよく"考え方が古い"とか"時代遅れ"などと言われるが、僕はそうは思わない。
仲間の死の上に生きるなど、生き恥を晒して平然と生きるなど……考えるだけで腹がたつ。
この考え方を他人にまで押し付けるつもりは毛頭無いが、それでも自分は突き通して逝くつもりだ。
やって見やがれ。
伏がそういった気持ちも込めて睨んでいると、デュースが旧時代に使われていたカウント装置のようなものを取り出し、一度押した。
カチッ
子気味いい音。
そしてまた再度押す。
カチッ
「あぁ、これは気にしないでください。」
精神的苦痛とは外傷・中毒・寒冷・伝染病・精神的緊張などの刺激が加わったとき、生体の示す反応のことである。