異常者と異端者
「もう起きているだろう?」
部屋へ入ってきた人物は、伏の座る椅子に近づいてくると、目の前に立ったのがわかる。
伏はピクリとも動かないでいた。
「狸寝入りかい?…まぁ良い。君には二、三教えて欲しいことがある。それを聞くため、まぁ君をこんな風な出迎えをしてしまっている訳なんだが…すまないね。」
年齢の推測し辛い声だな…
伏は尚も動かずに、相手の声を聞くことだけに集中する。30…下手したら40代位の男性…か?
「とりあえず目隠しはとってあげよう。」
視界が明るくなると、伏は渋々顔を上げ起きていることを認めた。
うわぁ…なんだこの人…
伏は目を開けていの一番にそう思った。
目の前に立つ人物には特定できる情報が何一つない。年齢も、性別も、感情も、なにもかも。
声すらも、改めて顔を見てから聞くと、こんなに高い声だったか?と思えてくるし…
「私の顔になにか?」
…女性なのか?
伏は別に、と首を振る。喋れないのは少しもどかしいかもしれない。
「そう…じゃあとりあえず口のも取ってあげよう。」
テキパキ外されると、伏は二、三度むせてから相手を改めて見る。
これは強敵かもしれない…
こちらが優位に立てる気がしない。
「では、教えて欲しいことについてですが。一つ目は四大カンパニーの勢力について、内部から見た勢力図を伺いたい。二つ目はあなた方のクラスについて、誰がどういった戦闘を得意としているのか諸々。最後に、首席の名影氏と一対一で話をしたい。その場を作る手伝いをしてほしい。」
一つ目は別段難しい要求じゃない。問題はあとの二つだな。
「それを聞いてどうするんです?」
伏が問うと、目の前の人物はホッとしたように胸をなでおろした。
「良かった。喋れないのかと思いましたよ。ちゃんと喋れるんですね。あぁ自分はデュースと言います。これからたっぷりお付き合いしていきますから、よろしくお願いいたします。」
あぁ、なんとも不気味な2人。