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トラストルノ  作者: なさぎしょう
盤上駒
164/296

移動道中 3


車に乗せられると、しばらく揺られ、そして何処かで降ろされる。が、この麻袋、目が粗い割に外が見辛い。

影とかはなんとなく視認出来るのだが……


お、この隙間からな若干人とか視認出来るな。


連れてこられたのはビジネス特区と一般地区の境界線になっている鉄柵の辺りのようだ。


「移動先は北地区(ノースヤード)なんですか?てっきり東地区(イーストヤード)かと…」


「いやいや、こっちで合ってるよ。」


気持ち悪い薄笑いで1人が答える。

本当にプロか?と疑いたくなるほどに、殺意が隠せていない。ここまで堕ちる程、女王(クイーン)は魅力的ということか…?




ナナはちょっとなら歩ける、といったが連中は車椅子を勧めてきた。その時点で怪しいなんてレベルじゃない。

何かあってもナナだけは守らなくては。


「セブンは脚が悪いのでしたっけ?」


「え?あ…う…うん、はい。」


突然話しかけられセブンは戸惑う。


「へぇ、それは大変ですね。戦闘なんかは参加も出来ないでしょう?」


男のねちっこい言い方にエイトがムッとして答える。


「いいんです。ナナ…セブンは情報収集なんかが得意で、専らそれで僕ら戦闘員を助けてくれてるんですから。」


すると、何がおかしいのか男はニタニタと笑いはじめた。


「いやいや失礼。大変でしょうというのは…エイト、貴方が大変でしょう?と思いまして。」


「ご苦労が絶えないでしょうしね。」


そう言うが早いか1人が銃を構えた音がする。同時に、カルマの隣にいた男の1人が素早く動いたのがわかった。

おそらく先程の男だ。






「この際、不穏分子は一掃しておきたいの。エイト(あの)()セブン(たち)は私のお気に入りだからよろしく頼むわね。」


恩人にそう言われては、ミスなどできない。しかも、幸運が重なった。

懐かしの人物がまさかの人質になっていたのだ。




銃発砲までの僅かな時間で相手の目の前へ、そして右手を銃口から相手の手、そして肘にかけて滑らせると、僅かに銃口が逸れる。そのまま発砲音と同時に左手を相手の腕の隙間から滑り込ませ、拳を顔面に叩き込む。

確実に鼻と目の辺り、そこにめり込む感覚があった。

1人目の男が倒れる寸前に、そいつを盾にしてさらにそいつの後ろにいたやつに半歩近づき、少し屈むと勢いよく回し蹴りをお見舞いする。

相手が避けても問題ない。しゃがんで避けるなんて馬鹿だ。

回し蹴りの途中で腹筋を使い脚を止めると、そのまま相手の脳天に踵落としを決める。

フラついた所で腕を持ち肩関節をきめる。



さて、あと1人…はもうすでに伸びてしまっていた。

視界、手足不十分の相手にも負けるような実力でトランプに入ろうなんざ甘い考えを持ちすぎだ。

まぁもっとも、今回は相手が悪かったな。


「その麻袋取ってやろうか?」


「いや、自分で取れるよ。」


出てきたのは懐かしい顔。当たり前だが、あの頃よりも随分成長している。が、面影は存分に残っていた。


「久しいな、カルマ。」






とりあえず殴るような音が聞こえたから、咄嗟に横にいた奴に回し蹴りからの股間蹴り、そして足を絡めて地面に引き倒し、絞め技。

…で、おちた。

手錠も袋も取らずして終わった。


「久しいな、カルマ。」


麻袋をとって広がった視界に、懐かしい笑顔が映った。





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