移動道中
「女王から伝達だ‼︎」
何をするでもなく、火の手の行方を追っていたセブン、エイト、カルマの元に"移動命令"が下った。
しかし…
「君1人で手負いの友人と、人質運ぶなんて随分大変じゃないかい?」
「いや、迎えを寄越してくれるらしい…あぁでも、彼等じゃないといいな…」
「彼等?」
カルマが聞くと、エイトはさすがに喋っていいものか、と思案し、しかし諦めたように口を開いた。
「女王の元には無償でもついて行きたい、っていう殺し屋やら工作員が集まってくるんだ。」
「まぁあの美貌だものね。」
「そう…で、より女王に近づくためにトランプの正構成員の座を求める者も少なからずいるのさ。んでそうなれば、弱そうな奴から狙われる…」
カルマは少なからず驚いた。トランプはわりかし上手く回っている集団だろうお思っていたからだ。
そりゃ個々の問題はあるだろうが、集団としては上手く機能している。
しかしそれはギリギリのバランスで保っているということか…。
「ねぇ…もし君が俺が逃げないって信じてくれるなら。そいつらよりも俺を信じてくれるなら、手錠の鍵を渡すか、手錠の留め具を留めずに紐かなんかで軽く結ぶ程度にしておいてもらえないか?」
「は?」
カルマの突然すぎる申し出に、エイトとセブンは面食らった顔をしている。
しかしすぐにその言葉の真意を見極めようとカルマを軽く睨んだ。
「本当に逃げようだなんて思ってないんだよ。たださっきから気になっていたんだけど、ナナくんは長い移動は車椅子なんじゃないのか?」
「…っめざといな。」
「まぁね。それでもしそいつらに襲われたら闘い辛いだろ?俺さ、こうやって捕まっちゃってはいるけど、そこそこ戦闘には自信あるのよ?」
「でも……」
エイトの心は揺れ動いているようで、セブンとカルマを何度も交互に見る。
しかし思い切ったように、バッとカルマを見ると決意を決めたように話し始めた。
「ナナを…守る方が大切だ。だから、馬鹿なことをしているというのは百も承知だが、その作戦にのった。絶対に…逃げるなよ?」
「もちろん。」
カルマは屈託なくニコリとすると、セブンにも「よろしくね」と改めて挨拶をし、握手まで求めた。
ほんの数回の出会いなのに、共鳴する所でもあったのか…3人はすっかり仲良くなっていた。いい友人、とはこういう関係、こういう仲を言うのかと納得してしまう程に。
コンコン、コン、コン、コンコンコン…
ドアのノック音が響く。