確信
本当は、妄想なんかじゃない。
かなりの確信を持って校長に話した。
下調べもした。亜細亜座についてだけじゃない、芦屋秀貴という人物についても、最近知り合った情報屋の方に調べてもらった。
ユキさんはすごく優秀だった。……それなりにやっぱりお金がかかったけれど。
PEPEをはじめ、SOUPの関連組織にいた事がない。といって代理戦争組織にいた事もない。
むしろ10年程前辺りから反体制派として目をつけられていた。
『それが、なぜか7年前行方を眩まし、その1年後、突然のPEPE校長職だ。すごいよ、この人調べ甲斐がある。』
ユキさんは嬉々として語った。
聞くどれもが初耳の事ばかりなのは当然としても、予想の数倍、数奇な人生を聞いて校長の見方が変わる。
『それで7年前まで何をしていたか、なんだけどね…どうやら亜細亜座創設8人の1人だったようだよ。芦屋秀貴は女装して日本舞踊やってたみたい。まぁ拝借した写真を見る限りかなりの美青年だからね、さぞや人気だったろうと思うよ。』
「それって集合写真ですか?芦屋秀貴と共に行方知らずになった女性も写ってますか?」
『うん?あぁそうだよ。これもなんなら秘匿便で送ろうか。』
「お願いします。こっちで確認してもらう。」
SOUPのクラッキングに掛からないようにエアスクリーンではなく、旧時代の端末で会話しているため、その場でその写真を見せてもらうことが出来ないのが惜しい。
『確認って誰に?本人?』
「いえ…実はいま同級生に芦屋校長の息子がいるんです。母親かどうかを確かめてもらおうと思って。」
『そうか。でも気をつけてね。亜細亜座は厄介な連中も多く出入りしている。あそこに深入りするのは…正直おすすめ出来ないよ。』
そう注意した上で、二言三言交わすと電話が切れた。
ユキさんだって、これ程優秀な情報屋なら亜細亜座にも…そしてトランプなんかにも伝手があるのだろうが、そこは暗黙の了解。聞いても教えてはくれまい。
「私がSOUPやPEPEや、君達を裏切っている。と言いたいのかな?」
芦屋校長は悲しそうな表情を浮かべ、それからこう続けた。
「その話が、君の妄想の域を出ないのなら…
それは、君の"妄想"だよ。」