らしい仕事 2
「そういえばさーふと思ったんだけど、芦屋校長ってPEPEの出身じゃないって聞いたんだけど本当?」
恩が聞くと、芦屋は首をひねりながら答える。
「うーん…俺もそれはちゃんと聞いた事ないんだよなー。でもPEPEに入ってないのに校長とか出来なくね?そもそもうち、父親の方が、ほら…えーと…婿養子?だからさ、芦屋家がそんな余所者とるとも思えないし。」
その意見に恩は「確かに」と納得したように頷くが、今度はロブがそこに意見する。
「でも、芦屋校長Sクラス出身ではないぞ。」
「「え?」」
「いや…ずっと前にさ、ティトとふざけてSクラス特権で過去のSクラスに通っていた有名人探しをな、名簿でしてたんだよ。」
「いや何やってんだよ。」
それを聞いて恩がすかさずつっこむ。
「ちょっと好奇心が旺盛だったんだよ。まぁそんでさ、それで盛り上がったんだけど、ふと校長の名前無いねってさがしたんだけどさ…見つかんなかった。校長の下の名前って秀貴だろ?そんな人いなかったんだよ。」
「…でもSクラスじゃなかったなら、それこそ芦屋家に養子入りなんて無理じゃない?ましてPEPEの校長だなんて。」
3人は作業の手を止めてあらゆる可能性考え始める。芦屋も、改めて言われてみると、自分の父親についてその過去や出生について何も知らないことに気づいた。
ただ、以前に祖父が父に対して妙な事を言っているのを聞いた事がある。
それは確か、母の入院などに際して、父が珍しく祖父に意見していた時だ…
「見世物だった分際で調子にのるな‼︎」
その発言を聞いた父は一瞬動きを止めた。
その時の表情は今でも鮮明に覚えている。傷つき打ちひしがれている、がその奥底には怒りや憎悪のような感情も見えていて…
まるで父の中に鬼が棲んでいるように思えたのだ。
「見世物……」
「うん?」
芦屋は無意識に言葉に出していたらしい。恩が聞き返してくる。
「あ、いや…なんでもない。」
「そう?あ、ねぇ‼︎舞人くん帰ってきたらさ、一緒に"亜細亜座"に行こうよ。息抜きがてらさ‼︎俺一回でいいから見てみたい演目…というか人がいるんだ。」
「亜細亜座?あの見世物屋の?」
ロブはこの非常事態に?と咎めるような響きを込めて聞き返す。
「そう‼︎あそこの1番人気の鈴っていう人が創設からの唯一残ってる人でしかもなにやらせてもすごい面白いらしいんだよ‼︎人生に一度は見ておかないと損らしいんだけど、家族で行った時はその人出なくてさ…」
「ちょっと…行ってみたいかも。」
珍しく面倒くさがりな芦屋がノッてくると、ロブも渋々「はいはい」と頷く。
「でも4人で行こう。女子に行ったら止められかねないし…潤くんは首席に嘘とか秘密とか出来なさそうだし…」
「確かに…」
4人はまた作業開始する。
「話戻すけどさ、仮に校長がSクラスじゃなかったとしても、あの人の優秀さは本物だよね。」
恩は素直にそう述べる。ロブも今度はしっかり同意の頷きをする。
「なんか…こう、校長らしい、感じの人だよな。」
芦屋は父親をそんなによく思ってはいなかったが、こうも褒められると自分の事でも無いのに、少し恥ずかし嬉しく思い、はにかんで誤魔化した。