らしからぬ行動
「問題は…」
名影の対面に座った芦屋校長は、最近一段と疲労の色が濃くなっている。見ているこちらが倒れはしまいかと不安になるくらい。
「問題は、いかに他の生徒に混乱を招かずに、カンパニー関係者の子供達を外へ出すか、だ。そもそもそれだけの人間が居なくなれば察しのいい者には感づかれるだろう。」
芦屋校長は淡々と問題について述べる。それは名影に説明や問題解決を求める、というよりも、自分の中でことの仔細を整理しているように聞こえた。
「しかし、実際には全カンパニー関係者ではなく、本当に上層部の人間の子供だけで良いと…さらに恩寿音くんが残ってくれることで気休め程度ではあるが"カンパニーで何かあったのでは?"という思いを少しでも減らしていく…」
「はい。現状ではこれが一番手っ取り早いかと。名簿の確認は機械でしますと外部から情報を盗まれないとも限らないので、規則に従い紙の書類にて手作業で纏めています。」
「そう…うん、本件は君に一任するよ。というかむしろよく私に話したね。」
芦屋校長はちょっと意外そうに聞く。
すると名影は当たり前だろうというような表情で返した。
「だって私はPEPEの首席…つまり一生徒なんですよ?ここでの権限は校長の方が上です。報告、連絡、相談は当然の義務です。」
それから名影はふと俯き何事か思案すると、また顔を上げて芦屋校長を見た。
「それに…私が思うに、芦屋校長は本来PEPEにいるような人間じゃないような気がして。」
「それは…どういう?」
「うーん…これは多分に私の勘も含んでいるのですが、芦屋校長はPEPEやSOUPをよく思ってらっしゃらないのではないですか?その校長という役職も気にいらない。」
芦屋校長は相変わらず疲れ切った面持ちで名影の言葉を聞く。
「校長は毎月密かにとある場所に向かわれてますよね?休日を利用しているのですから、行く事自体は別に不思議ではないのですが、あなたがそこへ行っている事にちょっと驚きがあるんです。」
芦屋校長はふーっと一つ息をつき、名影を見た。先程よりも、心なしか視線が強くなったように感じられる。
「芦屋校長は毎月…その……"亜細亜座"に行かれてますよね?」