死の吐息2
クロエがボタンを押した途端、Eの部屋を中心に防護壁が降りていく。クロエ自身は閉まっていく防護壁の隙間からスルリと内側に滑り込み、驚愕の表情を浮かべる博士達の横に並ぶ。
「何をした⁉︎」
「緊急稼働ですよ。逃走した今、本人のいない場でもどれだけ普通の人間が生きていけないのか…の実験と言い換えましょうか。」
「なっ…‼︎」
「研究第一、人類発展、まさしくあなた方が望む通りでしょう?」
防護壁が閉じきると同時に今度は、Eの部屋のガラス壁が地響きと共に開き始める。
「君も死ぬぞ‼︎」
博士達の叫びに、クロエはにこりと笑ってみせる。
「あなた方にはお伝えしていない研究結果がおひとつ。私や、今回のEの逃走を助けた少女などには、Eの放つ害毒はほとんど聞かないんです。私達には共通点がある。」
開く扉に怯えている博士達の前でクロエはコンタクトレンズを外す。そのコンタクトの下からは、灰色の瞳が覗いた。
「君は…灰眼種だったのか‼︎」
クロエは開くガラスの向こう側で状況が飲み込めず慌てる下級構成員を傍目に捉えながら、博士達に頷いてみせる。
「あなた方が見下してきた灰眼種や、女性博士、下級構成員…そして若手の博士達に懺悔でもしたらいかが?」
クロエが見下すように博士達を見るのと、博士達が苦悶の表情でうずくまりだすのはほぼ同時だった。
手先、足先、鼻先から肌が…崩れていく。