交渉 トランプ×SKANDA 6
「僕自身……ですか。」
ジャックがなんとも言えない、困惑した表情で聞き返すと、グプタは何がおかしいのか豪快に笑いだした。
そしてひとしきり笑いきると、もう一度その見えない瞳でジャックを見据える。
「何も、君に母親と同じような事をしろ、と言っているわけではない。オンナには事足りているからな。」
下卑た野郎だ。
ジャックは咄嗟に嫌悪感を隠しきれなかった。女王をその辺の低俗な女と一緒にした事も、自分をそれらと一瞬でも比べられた事も、ジャックには吐き気を催すくらい最低なことととれた。
「君には"民衆を導く自由の女神"になって欲しいのだ。大衆を、導き、鼓舞する存在に。」
「つまり…戦場に出ろ、ということですか?」
「あぁ、そういうことになるな。君は戦闘の腕もたつのだろう?それになにより、君には天性の才…カリスマ性といえばいいのか…それが備わっているのだ。トランプと取引をするつもりはない。だから君個人に、君として、その才を振るって欲しいのだよ。」
ジャックは思わず言葉を発さずにはいられなかった。
「お言葉ですが、戦場に大衆を引きずりだすのは決して名画に描かれた女神の本分ではございません。し、僕にはそれこそ女神のような…つまりカリスマ性とやらがあるとは思えない…。なにより、」
ジャックはここで一旦言葉を切り、渋々認める、という風に語気を弱めて言い切った。
「なにより、僕の戦闘術は大規模な戦場には向きません。あくまで、対個人もしくは少数向きです…」
「では、女王にぜひその任を任せようか。まさしく女神だ。」
「……っそれは‼︎」
南に送り出す時、女王はこうなることまで予想して送り出したのだろうか…?
だとしたら、残酷な人だ。
しかし、女王が望むなら。
戦場になんて行きたくはない。
出来れば女王との確執を全て取り除いてから行きたい。
……それでも女王が望むなら。
「わかり…ました。僕が、僕に出来る範囲になってしまいますが…大衆を導いてみせましょう。」
あぁ…逃げたい…




