交渉 PEPE×紅楼5
「俺は、紅楼の代表として、決して誤った選択をしてはならない。またこの立場に甘んじてもいけない。」
劉清居の目は、ひたりと名影を見据える。
「そういった立場にあって俺はいま、大変興味をそそられている。君という…名影零という人間と取引をすることに。多大な好奇心だ。」
それから幹部達を見渡す。
「しかし俺の判断だけでは、いささか不安であるな。ここにいる、優秀な御方々にも意見を求めようか。」
「私は、賛成です。トラストルノの未来ある若者達にぜひ協力していきたい所存であります。」
真っ先に言葉を発した王瑤妃は、4人の若者に向き直ると、華やかな笑顔とともにウィンクをしてみせた。
名影はふっと微笑みながら頭をさげる。
すると、王瑤妃に続くように、また1人の男性幹部が賛同の意を述べてくれる。
「それにうちは、どちらにしても伏の息子を奪還しなければならない。」
そういうと、その男の後ろにたっていた痩躯の男性が一歩前に出てきた。
芦屋は何度か会ったことがある。伏舞人の父親、その人だ。
「むしろ、こちらが協力を願いたいくらいです。尽力させて欲しい。」
そして頭まで下げられる。
「私も、賛成です。」
「賛同ですとも、子供にここまで言われちゃぁ…」
次々と賛同の声が上がる。
恩や芦屋もこんなに賛成して貰えるとは思っておらず、驚きと同時に、改めて自分たちの首席の優秀さに感嘆した。
「ところで、取引というからには、こちらからも依頼をしたいわけだが…どうかね、名影首席。2人きりで、ゆったりと話をしようじゃないか。」
幹部全員の賛同を得たところで、劉清居から思いもよらない提案が出された。
当然、真城はそんなこと許すわけがない。睨み、講義を述べようとすると、劉清居がそれを手で制した。
「いや、語弊があった。互いに1人ずつくらいは側近を置いても良しとしよう。ただし、口は挟ませないで欲しい。」
名影はチラリと真城を見てから、また劉清居に視線を戻し頷いた。
「えぇ、分かりました。他の2人をどこかで待たせてもらえませんか?」
「あぁもちろん。王が案内してくれるだろう。」
王瑤妃はニコリとすると「かしこまりました。」と言い、芦屋と恩を連れて部屋の外へ出る。
他の幹部達も、劉清居にしっかりと敬礼をし、名影に励ましや期待の声を掛けつつ部屋を後にする。
後には、向かい合い腰掛ける劉清居と名影零……そして2人の後ろには立ち控える真城と、いつの間にか劉清居の背後には先程までいなかったはずの40〜50代くらいの旧日系男性が立っていた。
さて、どんなことを要求されるのだろうか…。