表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラストルノ  作者: なさぎしょう
盤上駒
149/296

交渉 PEPE×紅楼4


名影の発言に、全員が少なからず驚かされた。


「君は…SOUPに親御さんがいらっしゃらなかったかね?」


初老の幹部がそう問うと、名影は肩を(すく)めてみせる。芦屋はそれを横目で見て、改めて名影と自分の実力差を感じた。

名影の中でスイッチが入ったのだろう。今は緊張も冷静になるための程よいものでしかないはずだ。

目に、いつも以上の強い光がある。


「このトラストルノで、親が誰であるかなんてことはほんの些細なことでしょう。大事なのは私という個人であり、私という個人の属する集団です。」


それから名影は苦笑しつつ続けた。


「とは言っても私は父を尊敬しています。その父が、SOUP(スープ)の限界について愚痴を漏らしたことは一度や二度ではない。」


名影は変に考え込むような間を作らない。素直な気持ちを、素直なまま表に出していく。


「どんな組織だって良い点だけでないのは承知です。紅楼(あなたたち)だって。……しかし、こと今回の問題に関しては、SOUPは紅楼(あなたがた)に劣る。また、その付属組織となってしまっているPEPEも身動きがとりづらい。」


劉清居(りゅうしんい)を始めとした、威風堂々たる面々を前にして、それでも怖気付くことなく話を進める。

他の3人も名影につられ、少しずつ落ち着きと強い意志を取り戻しつつあった。


「正直に申します。私は、今ここに1人の…名影零(なかげれい)個人として取引(ビジネス)のお話に伺いました。PEPEの代表ではありません。ただ私という個人の中に、PEPEのSクラス首席という一面も残念ながら含まれている、というだけです。」


「ふむ……」


幹部達がむしろ名影の圧力に圧されはじめている。劉清居(りゅうしんい)王瑤妃(わんようひ)だけが面白い。とでもいいたげな表情で名影を見ていた。


「私個人として、お願いしたい。ご助力願えませんでしょうか?」


場が静まり返る。

が、決して嫌な静寂ではない。むしろ当たりくじを待つ時のあの高揚を含んだ静寂に近い。

全員の目が、劉清居の荘厳ともとれる顔に、重く響くその声に、集中された。







劉清居の口が、ゆっくりと躊躇いを含むかのように開かれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ