交渉 トランプ×SKANDA 4
王と呼ばれるこの男が、SKANDAのトップだ。
恰幅のいい身体、褐色の肌には至る所に古傷の痕がある。大分白髪の混じった髪と髭を持っていても、決して老いや衰えを感じさせない。
そしてなにより…濁り、今は何物も映さないその瞳は、映さないが故により深淵を覗き込まれているような奇妙な不快さを感じさせる。
「それで?」
突然王グプタが問いかけてきた。ジャックが説明を求められたのかと思い、口を開こうとすると、それをグプタが片手で制し、もう一度今度は首をしっかりとジャックの後ろ側に向けて問いかける。
「それで?お前らはいつまでそこに立っているつもりだ?」
「ひっ‼︎はい、すぐに退出いたします‼︎」
ジャックの後ろに立っていた2人は、慌てて出て行こうとする。
「待て、客人の手足を自由にしてから出て行け。」
「は、はい‼︎」
すると2人は小声で何事か言い争い始めた。
「俺がやる。」
「いい、俺が…」
「なんでだ、俺が‼︎」
正直、そんなもの、どっちでもいいから、早く取ってくれ。地味に痛いのだ。
大体何を争う必要がある?
「もういい、片側ずつ外していくぞ。」
すると、両側から男たちが、まずは脚を結ぶ綱を外しにかかった。
「………。」
なるほど。聞いたことがある。
SKANDA含め、南では女性が家の中から出てこない。外で女を見かけることはほとんどない。個人主義のトラストルノにあって南の多くの女性たちが選んだのは"子供を産み、家を守る"ことだった。
そのため、南では旧時代の時の半分も女性が見られず、貴重視されているのだ。
故に…ジャックには理解できないが、女性がいない分のあるゆる鬱憤の矛先が、少年や中性的な美青年達に向いていった。
だから南にはジャックが行くべきじゃない。と身を案じたトレイに言われた。
…がまさか本当にこんなことあるとはな。
「…あのー…外すのまだ終わりません?」
明らかに撫で回すような妙な手つきで触られて気持ち悪い、ということより、早く話を済ませて帰りたかったので、ジャックは急かす。
しかし男2人は顰め面をしただけで、特に触るのも、ゆったりとしたスピードも、改善はされなかった。
ベタベタ触られながら、白濁の瞳から刺さるような視線を感じることの居心地の悪さったらない。
ようやく手足が解放されると、思わず少し気が緩んだ。
ジャックは慌ててもう一度拳をぎゅっと握り、集中を戻すと、白濁の瞳を、今度は臆さぬよう、じっと見返した。
さぁ、ようやく交渉開始だ。