交渉 トランプ×SKANDA 3
随分、不躾なお呼ばれをされたもんだ。
ジャックが目を覚ますと、自分の身体はすでに茹だるような暑さの及ばない、室内にあった。
旧時代の頃の手動の車椅子に括り付けられているようで、周りに足音が数人と、真後ろに車椅子を押している人物がいるのが分かる。
目隠しの上からさらに麻袋を被せられているようで、首元がチクチクするのが気になるが、まだ目が覚めたことを相手に悟らせないように…とジャックは目が覚めた瞬間から、徹底して四肢に力をいれずにいた。
「おい、本当にこいつが交渉に来たやつなのか?」
「間違いないさ。」
「だってこんなガキだぞ?しかも女みてぇな顔してっしよ。」
失礼な奴がいるな。
ジャックは内心毒づきつつ、自分の容姿を思い浮かべる。確かに、幼く見られることはあるし、そもそもまだまだ若い。正確な歳はわからないが22か3くらいのはずだ。
"女みたい"もまぁ…そもそもパーツは母似だからな。
でもナメられているようで良かった。
変に警戒されたりしていると落ち着かない。
「売っちまった方が金になりそうだけどなー。」
「高く売れそうだもんな。」
おい、いくら気絶しているからって本人の前でそういう話するなよ。
ジャックが内心ツッコミを入れていると、周りを囲む男達の間から奇妙な発言が聞こえてきた。
「ダメだ。そいつは頭の好いていらっしゃる女王の息子らしい…向こうさんから"手出しは絶対にするな。"ってキツーく言われたらしいからな。」
「そんなに大事な息子さんならこんなところに単身送り込むなよなー。」
女王が…手を出すなと言った…?
本当に?
…いや、手駒が無くなられては困るからか。
特別な意味などはないのだろう。
「よし、このまま入れるぞ。」
「軽いから持ち上げるのは2人で足りるな。」
ついに、ご対面か?
ジャックは覚悟を決め、目を見開き麻袋と目隠しが取られるのを待った。
ガサガサっ…パサッ…
瞬時に明るい場所に目を慣らす。すると部屋の中の様子が少しづつ分かってきた。
部屋全体は照明のせいか全体にまるでオレンジ色のエアスクリーンがかけられたかのように見える。
さらに、部屋のあちこちに見事な刺繍の施された絨毯やタペストリー。豪奢な彫り物のタンス。
部屋全体がとても豪華に作られているのに、決してしつこさは感じない。現代的なものが徹底して省かれているからだろうか…?
部屋の主は目の前の人物なのだろうが、あえてジャックは部屋の隅々に視線をやることで、その人物と目を合わせることを避けた。
ジャックには恐ろしく感じられた。
何も映さないはずの…
実際、今も何も映してはいない…
しかし恐ろしいのだ…
あの白濁の瞳が…