交渉 トランプ×SKANDA 2
電車を降りたら次は船。汚いドブ川をいまにも転覆しそうな舟に揺られる。次の舟は少しだけ立派な屋根付き。こちらは綺麗な川を渡るのに使う。
「あぁっつ‼︎」
ジャックはあまりの暑さに、SKANDAに着く前から身体的にまいってしまっている。交渉ごとに向かう時、感情的になってしまうのは良くない。しかし、これは…イライラするなという方が無理だ。
独特の暑さが辛い…
「ここか…?」
話をしたい旨をSKANDAの相談役に持ちかけたところ------彼は女王にぞっこんのため二つ返事で了承してくれた------指定されたのはドーダムという小規模屋台村のはずれにある建物だった。
おそらくこの建物で合っていると思うのだが…。
あまりにボロすぎやしないか?
罠か?
ジャックは目の前の崩れかけの建物を呆然と見つめる。いや実際はあまりの暑さに、意識が朦朧としていて、"見て"すらいない。
「で、これが、なん…な………」
ジャックは倒れる寸前、違和感の正体に気づいた。
ただ暑さのせいで立ちくらみを覚えたのではない。目の前のボロ小屋が奇妙に歪められて作られているのだ。
そのせいで、この小屋を直視していると酔いと眩暈が襲ってくる。
しかしこのことに気づいた時には、ジャックの意識は、この地の独特の熱気にまとわりつかれて沈み込んでしまった後だった。