交渉 PEPE×紅楼3
「まず私達がトランプと、おそらく始めて接触したと思われるのが3ヶ月程前に起こった事件です。この事件でナギという一人の女生徒が殺害されました。」
名影は"死神"と対峙した時から、トランプの脅威について思い知らされた。彼らはPEPEにすら容易く入り込んできていたわけだ。
「この女生徒殺害はトランプ構成員の一人、"死神"と呼ばれる女によって行なわれたと思われます。その後、SOUPからの指示で、SOUP本部にてトランプと衝突。この際、西校の生徒が一人誘拐されました。安否も分からない状態でしたが、幸い生体反応装置もしくはインキの着用が西校では義務付けられていたため、そちらを辿って2箇所まで的を絞りました。」
紅楼の幹部たちはただ静かに話を聞き続ける。
「そして先日、彼の身を奪還すべくトランプと再度衝突するに至りました。…が、そこで………」
名影はそこで言葉をきった。座る幹部達の背後には幹部補佐達が立っている。つまり…伏の父もまた、そこに立っているのだ。伏舞人だと告げるのが事実とはいえ躊躇われる。
「伏舞人が攫われました。西校の彼も結局…」
伏の父親の表情は影になってしまっていて、名影達からは見えない。
「で、なぜ助けを求めるのが我々なのだね?伏のところの息子が攫われたからか?」
幹部の一人、いかにも武闘派といったいかつい面の男が、質問を投げると、名影は首を振り、それを否定した。
「いえ、今回の件…SOUP本部での戦闘も含めまして、SOUPでは全てが後手後手に回ってしまい、とてもトランプを潰したうえで、二人の生徒を奪還することは不可能と判断したためです。」
名影のあまりにもはっきりとしたSOUP批判に、その場にいた生徒だけでなく、幹部達も驚かされた。
名影は伊達に首席を務めているわけではない。
そして大した考えも、覚悟もなく紅楼へ交渉にくるほど、まぬけな愚か者でもなかった。