交渉 PEPE×紅楼
名影は芦屋、恩、真城を連れて"紅楼"の本山を訪れていた。朱塗りの門が4人を威圧する。
「さて…勝手に入れとは言われたけど…これ、あれなの?入ってこの"大厦"って部屋を探しまわれってこと?」
「いや、さすがに案内係が来ると思うんだけど…」
恩は中に入ったことがあるが、広大なうえに部屋の名称が見辛いものまであって探すとなると1日かかってしまうかもしれない。
別に自分達は他のカンパニーからの使者というわけでもあるまいし、案内くらいは寄越してくれるはずだ。…いや敵対組織ならなおさら勝手に歩かせたりしないだろうが。
「案内係ってあのいかつい人じゃないよね?」
「いや、あれはただの守衛だと思っ………‼︎」
「いたいた‼︎お待たせ、ごめんね遅くなっちゃって‼︎」
真城以外の3人が息を飲む。
やってきた人物の美貌と華やかな雰囲気もそうだが、なによりやってきた人物その人自体に驚いてしまった。
「王瑤妃⁉︎」
名影が思わず敬称を付け忘れて叫ぶ。
真城だけが「誰だそいつ?」とでも言いたげな表情で女性をみているが、他の3人はなおも驚きの様子で彼女に魅入った。
「はーい、王瑤妃ですよ‼︎嬉しい、もしかして私って人気者だったりする?」
王瑤妃は噂に違わぬ凜として華のある、かっこいい女だったが、噂に聞くよりも明るく気さくな好印象だ。
こんな気軽にこえをかけてくれるなんて、"紅楼の幹部"とは思えない。
そもそも…
「え、あの…もしかして王女史が案内してくださるんですか?」
「そうよ‼︎贅沢でしょー♪」
贅沢なんてもんじゃない。もしかして罠か?などと不躾に疑ってしまうレベルだ。
「ほら他の幹部っていかつい男ばっかじゃない?やっぱりここは私みたいに人当たりもよくて華もあるひとが来たほうがいいかなって…なんちゃって‼︎」
いや、正直助かった。
まさしく人当たりのいい彼女が来てくれたことで、緊張が少し和らいだし、なにより道すがら質問などもしやすい。
「そういえば‼︎伏くんの息子さんが捕まったんですって?」
その言葉に芦屋がビクッと反応する。
「もし良ければ私の部隊にも捜査協力させて、って伏くんのお父様に申し上げたんだけどねー…手を煩わせるわけには、って遠慮されちゃったのよ‼︎もしあなた達も捜索とか、するようなら言って頂戴‼︎協力するわ。」
王瑤妃の個別部隊といえば"刺杀隊"のことだろうか?東西南北のカンパニーの中でも最強を謳われる暗殺集団だ。
そんなところが協力してもらえたら、トランプ掃滅も時間の問題だろう。
「ぜひ、お願いしたいです‼︎」
「うんうん、協力したげる‼︎そういえばあなたが噂のPEPE初の女首席ちゃん?」
「はい。」
「いい目をしてるわね。女なのに、とか女だからっていう奴がいても無視よ、無視‼︎なんかあったら恋愛でもなんでも私に相談してちょうだいね‼︎」
王瑤妃はそのあとも色々と話し、励まししてくれた。
「さて、着いたわ。ここが今回の会合の場、"大厦"よ。」